最高人民法院、最高人民検察院、公安部、司法部は、「知的財産権侵害刑事案件の処理における法律適用の若干問題に関する意見」を発表した
1月12日、最高人民法院、最高人民検察院、公安部、司法部が、「知的財産権侵害刑事案件の処理における法律適用の若干問題に関する意見」を共同で発表した。
本意見は、計16条あり、主に公安機関、人民検察院及び人民法院が近年知的財産権侵害の刑事案件を処理する際に直面した新状況及び新問題を解決するために制定されたもので、法律適用の問題を更に明確化した。中では、主に以下のような内容を含む。
1)手続的な規定
本意見では、管轄の係争、証拠規則について明確化した規定をしており、例えば、「知的財産権侵害犯罪事件は、犯罪地の公安機関で立件、捜査される。必要な場合、犯罪容疑者の居住地の公安機関で立件、捜査することができる」と規定してある。行政法執行部門による収集、取得した証拠の効力について、法廷審理における反対尋問を受けて確認された場合は、刑事証拠として使用することができる証拠と法に基づいて改めて収集、製作する証拠について、それぞれ規定してある。
2)罪状決定
本意見では、例えば、刑法第213条に定められた「同一種類の商品」及び「その登録商標と同じ商標」の認定の問題、刑法第217条に定められた「発行」の認定の問題、著作権侵害罪における「営利を目的とし」、「著作権者の許諾を受けず」などの認定の問題を更に明確化した。
3)定罪処罰基準
虚偽登録商標の商品を販売する罪(未遂)、不法製造した登録商標標識を販売する罪(未遂)、及び情報ネットワークを介して権利侵害作品を広める罪について、定罪処罰基準を規定する。
それと同時に、本意見では、「数回にわたり知的財産権侵害行為を実施しており、行政処分又は刑事処罰を受けていない場合の不法経営額や違法所得額又は売上額は、累計ベースで計算する」と規定してあり、「2年以内に、知的財産権侵害の違法行為を数回にわたって実施しており、行政処分を受けておらず、累計額で犯罪を構成した場合は、法に基づいて罪を判定して処罰を与えるものとする。知的財産権侵害行為の実施者に対する訴追期間は、刑法の関連規定を適用し、前述した2年の制限を受けない」と規定してある。
本意見に加えられた内容に基づき、現行の中国知的財産権侵害刑事事件の定罪処罰基準は、下記の表に示す通りである。
改正後の知的財産権侵害刑事事件定罪量刑基準
罪名
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3年以下の有期懲役又は拘留、罰金の併科又は単科
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3~7年間の有期懲役、罰金の併科
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虚偽登録商標罪
(1種類)
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不法経営額が5万元以上である場合
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不法経営額が25万元以上である場合
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違法所得額が3万元以上である場合
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違法所得額が15万元以上である場合
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虚偽登録商標罪
(2種類以上)
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不法経営額が3万元以上である場合
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不法経営額が15万元以上である場合
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違法所得額が2万元以上である場合
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違法所得額が10万元以上である場合
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虚偽登録商標の商品を販売する罪
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売上金額が5万元以上である場合
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売上金額が25万元以上である場合
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虚偽登録商標の商品を販売する罪(未遂)
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虚偽登録商標の商品がまだ販売されておらず、商品金額が15万元以上である場合
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虚偽登録商標の商品がまだ販売されておらず、商品金額が25万元以上である場合
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販売額(5万元)と未販売分金額の合計金額が15万元以上である場合
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販売額(5万元)と未販売分金額の合計金額が25万元以上である場合
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登録商標標識を不法製造し、不法製造した登録商標標識を販売する罪
(1種類)
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侵害商標標識数が2万点以上である場合
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侵害商標標識数が10万点以上である場合
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不法経営額が5万元以上である場合
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不法経営額が25万元以上である場合
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違法所得額が3万元以上である場合
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違法所得額が15万元以上である場合
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登録商標標識を不法製造し、不法製造した登録商標標識を販売する罪
(2種類以上)
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侵害商標標識数が1万点以上である場合
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侵害商標標識数が5万点以上である場合
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不法経営額が3万元以上である場合
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不法経営額が15万元以上である場合
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違法所得額が2万元以上である場合
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違法所得額が10万元以上である場合
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不法製造した登録商標標識を販売する罪(未遂)
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未販売分商品数(1種類)が6万件以上である場合
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未販売分商品数(2種類)が3万件以上である場合
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販売商品数(2万件)と未販売分商品数(1種類)の合計が6万件以上である場合
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販売商品数(1万件)と未販売分商品数(2種類)の合計が3万件以上である場合
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虚偽特許罪
(1項)
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不法経営額が20万元以上である場合
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違法所得額が10万元以上である場合
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権利者の損失が50万元以上である場合
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虚偽特許罪
(2項以上)
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不法経営額が10万元以上である場合
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違法所得額が5万元以上である場合
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著作権侵害罪
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不法経営額が5万元以上である場合
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不法経営額が25万元以上である場合
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違法所得額が3万元以上である場合
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違法所得額が15万元以上である場合
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違法複製品が500件以上である場合
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違法複製品が2500件以上である場合
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著作権侵害罪
(情報ネットワークを介して他者の文字作品、音楽、映画、テレビ、美術、撮影、録画作品、録音録画製品、コンピュータソフトウェア及び他の作品を公衆向けに発信する)
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不法経営額が5万元以上である場合
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不法経営額が25万元以上である場合
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他者の作品を発信した数が500部以上である場合
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他者の作品を発信した数が2500部以上である場合
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発信した他者の作品への実際のクリック数が5万回以上である場合
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発信した他者の作品への実際のクリック数が25万回以上である場合
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会員制で他者の作品を発信しており、登録会員が1000人以上である場合
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会員制で他者の作品を発信しており、登録会員が5000人以上である場合
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上記のうちの2つ以上の基準の半分以上にそれぞれ達した場合
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上記のうちの2つ以上の基準の半分以上にそれぞれ達した場合
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侵害複製品を販売する罪
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違法所得額が10万元以上である場合
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商業秘密侵害罪
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権利者の損失が50万元以上である場合
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権利者の損失が250万元以上である場合
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注:登録商標標識を不法製造し、不法製造した登録商標標識を販売する罪への刑罰には、更に3年間以下の管制が含まれる。