法釈 [2024] 第 6
号
独占禁止法上の民事紛争事件の審理における法の適用に関する
若干の問題に関する最高人民法院の解釈
(2024年2月4日最高人民法院審判委員会第1915回会議で可決され、2024年7月1日より施行される)
市場における公正な競争秩序を保護し、法に基づき独占禁止法上の民事紛争事件を公正かつ効率的に審理するために、『中華人民共和国民法典』『中華人民共和国独占禁止法』『中華人民共和国民事訴訟法』及びその他の関連法に基づき、本解釈を制定する。
一、手続規定
第一条 本解釈にいう独占民事紛争事件とは、自然人、法人又は非法人組織が、独占的行為により損失を被った場合、及び契約の内容又は事業者団体の規約、決議、決定などが独占禁止法に違反したことに起因する紛争が起き、独占禁止法に基づいて人民法院に民事訴訟を提起した事件をいう。
本解釈にいう事業者団体とは、業界団体などを含む 2つ以上の事業者が共通の目的を実現するために結成した結合体又は連合体をいう。
第二条 原告が独占禁止法に基づいて人民法院に民事訴訟を直接提起し、又は独占禁止法執行機関によって独占的行為を構成すると認定される処理決定がなされた後に人民法院に民事訴訟が提起され、かつ法律に規定される受理条件を満たす場合、人民法院はこれを受理しなければならない。
原告が人民法院に対し、被告の特定の行為が独占に該当することの確認を求めるだけで、被告に民事責任を負うことを求めない場合、人民法院は訴訟を受理しない。
第三条 一方の当事者が人民法院に独占民事訴訟を提起し、相手方当事者が双方間に契約関係が存在しかつ既存の仲裁合意があることを理由に人民法院が訴訟を受理すべきではないと主張する場合、人民法院はこれを支持しない。
第四条 第一審の独占民事紛争事件は、知的財産法院及び最高人民法院が指定する中級人民法院が管轄する。
第五条 独占民事紛争事件の地域管轄は、事件の具体的な状況に応じて、民事訴訟法及び関連司法解釈の権利侵害紛争、契約紛争などに関する管轄規定に基づいて決定されるものとする。
第六条 原告が、中華人民共和国域外にある被告の独占的行為が域内における市場競争に排除的又は制限的な影響を及ぼすとして、中華人民共和国域内に住所を有しない被告に対して独占禁止法に基づく民事訴訟を提起する場合、管轄法院は民事訴訟法第二百七十六条の規定に従って決定される。
第七条 事件の立件時の事由が独占民事紛争ではない場合において、人民法院が受理した後審査を経て、独占民事紛争であると判明したが、事件を提起された人民法院が独占民事紛争の管轄権を有していない場合、人民法院は当該事件の管轄権を有する人民法院に移送しなければならない。
第八条 2以上の原告が同一の独占的行為について、管轄権を有する同一の人民法院にそれぞれ訴訟を提起した場合、人民法院はこれを併合審理することができる。
2以上の原告が同一の独占的行為について、管轄権を有する異なる人民法院にそれぞれ訴訟を提起した場合であって、後に立件した人民法院が、管轄権を有する他の人民法院が先に立件したことを発見したときは、事件を先に立件した人民法院に移送する旨の裁定を下さなければならず、移送を受けた人民法院はこれを併合審理することができる。
人民法院は、当事者に対し、提訴された独占的行為に関連する行政法執行、仲裁及び訴訟などに関する情報の提供を求めることができる。当事者がこれをありのままに提供することを拒否した場合、このことは、信義誠実の原則に従ったかどうか、権利の濫用に当たるかどうかなどを判断する要素として考慮することができる。
第九条 原告は、正当な理由なく、影響地域、持続期間、実施場所、損害範囲などの要素に応じて被告の同一の独占的行為を分割し、それぞれ複数の訴訟を提起した場合、最も先に受理した人民法院が併合審理するものとする。
第十条 独占禁止法執行機関によって独占的行為に該当すると認定された処理決定について、法定期限内に行政訴訟が提起されなかった場合、又は人民法院の発効した判決によって確認され、これに基づき関連独占民事紛争事件において当該処理決定が認定した基本事実が真実であると原告が主張する場合、再び挙証して証明する必要がない。
ただし、これを覆すのに足る反対証拠がある場合には、この限りではない。
人民法院は必要に応じて、処理決定を下した独占禁止法執行機関に対して、当該処理決定の関連状況の説明を要求することができる。独占禁止法執行機関が提供した情報または資料がまだ公開されていない場合、人民法院は職権、または申請に基づき、相応の保護措置を講じなければならない。
第十一条 当事者は、人民法院に対して、事件の関連分野、経済学などの専門的知識を有する人員1名又は2名が出廷して、事件の専門的問題について説明するよう申し立てることができる。
当事者は、人民法院に対して、専門機関又は専門家に委託して、事件の専門的問題について市場調査又は経済分析意見を提出するよう申し立てることができる。当該専門機関又は専門家については、双方当事者が協議のうえ決定することができる。協議が成立しない場合には、人民法院が指定する。人民法院は、民事訴訟法及び関連司法解釈の鑑定意見に関する規定を参照し、当該専門機関又は専門家から提出された市場調査又は経済分析意見を審査・判断することができる。
一方の当事者が事件の専門的問題について関連専門機関又は専門家に市場調査又は経済分析意見の提出を自ら委託した場合であって、当該意見に信頼できる事実、データ又はその他の必要な基礎資料の裏付けが欠如し又は信頼できる分析方法が欠如しているとき、或いは、他方の当事者が反駁するに足る証拠又は理由を提出したときは、人民法院はこれを採用しないものとする。
第十二条 事業者が独占的行為を行い、社会の公共利益を害し、設区市(市轄区が設置された地級市)以上の人民検察院が法により民事公益訴訟を提起する場合については、公益訴訟に係る法律と司法解釈の規定が適用されるが、本解釈に特別な定めがある場合は、この限りではない。
第十三条 訴えの対象である独占的行為が独占禁止法執行機関により立件され調査がなされている場合、人民法院は、事件の具体的な状況に応じて、訴訟中止の裁定を下すことができる。
二、関連市場の定義
第十四条 原告が、訴えの対象である独占的行為が独占禁止法に違反していると主張する場合、通常、独占禁止法第十五条第二項にいう関連市場を定義し、かつ証拠を提供するか又は十分な理由を説明しなければならない。
原告が、関連市場における被告の市場シェアを理由に、被告が市場支配的地位又は顕著な市場支配力を有していると主張する場合、関連市場を定義し、かつ証拠を提供するか十分な理由を説明しなければならない。
原告が、以下のいずれかを直接証明するのに十分な証拠を提出した場合、関連市場の定義についてさらなる立証責任を負わなくてもよい。
(一) 訴えの対象である独占的協定の事業者が顕著な市場支配力を有していること
(二) 市場支配的地位の濫用で訴えられた事業者が市場支配的地位を有していること
(三) 訴えの対象である独占的行為が競争の排除・制限効果を有すること
原告は、訴えの対象である独占的行為が、独占禁止法第十七条第一号乃至第五号及び第十八条第一項第一号、第二号に規定する状況に該当すると主張する場合、関連市場の定義について証明する責任を負わなくてもよい。
第十五条 人民法院は、事業者が一定の期間内に特定の商品又はサービス(以下、「商品」と総称する)について、競合する関連商品市場及び関連地域市場を定義する場合、事件の具体的な状況に応じて、訴えの対象である独占的行為に直接関わる特定の商品を基に、需要者の視点から需要代替分析を行うことができる。供給代替による事業者の行為に対する競争制約が需要代替と同様である場合は、供給者の視点から供給代替分析を行ってもよい。
人民法院は、需要代替または供給代替について分析する場合、仮想独占者テストの分析方法を採用し、一般的に価格上昇の仮想独占者テストを選択することができる。事業者間の競争が、主に品質、多様性、革新などの非価格競争として現れる場合は、品質低下、コスト上昇などの仮想独占者テストを方法として選択することができる。
第十六条 人民法院は、需要代替の観点から関連商品市場を分析し、定義する場合、通常、需要者の商品特性、機能及び用途に対する需要、品質の認可、価格の了承及び入手の容易さなどの要素に基づき、需要者が密接な代替関係を有すると考える商品のグループ又は種類からなる市場を関連商品市場として決定する。供給代替の観点から関連商品市場を分析し、定義する場合、他の事業者の市場参入の意図及び能力、負担されるコスト及びリスク、克服される市場障害、必要とされる期間などの要素を総合的に考慮することができる。
インターネットプラットフォーム(以下、「プラットフォーム」と称する)に関わる関連商品市場を分析し、定義する場合、訴えの対象である独占的行為の特徴、競争の排除・制限効果を生じさせる又は生じさせる可能性のある具体的な状況、プラットフォームのタイプなどの要素を踏まえて、一般に、当該プラットフォームが訴えの対象である独占的行為に最も関連する片方の商品に基づいて関連商品市場を定義することもできる一方、訴えの対象である独占的行為が関連する多角的商品に基づいて複数の関連商品市場をそれぞれ定義し、必要に応じて特定のプラットフォームに基づいて全体的に関連商品市場を定義することもできる。特定のプラットフォームが、クロスサイドネットワーク効果を有し、かつそのプラットフォーム運営者に十分な競争制限を与える場合、当該プラットフォームに基づいて全体的に関連商品市場を定義することができるほか、クロスサイドネットワーク効果に関わる、多角的商品に基づいて、複数の関連商品市場をそれぞれ定義し、かつ各関連商品市場間の相互関係や影響を考慮することもできる。
第十七条 人民法院は、需要代替の観点から関連地域市場を分析し、定義する場合、需要者が商品価格又はその他の競争要素の変化に伴って商品を購入するために他の地域に向かう状況、商品の輸送コスト及び輸送特徴、需要者の多くが商品を選択する実際の地域及び主な事業者の商品販売分布、地域間の市場障害、特定の地域における需要者の好みなどの要素を総合的に考慮することができる。供給代替の観点から関連地域市場を分析し、定義する場合、他の地域の事業者の商品価格などの競争要素の変化に対する反応、他の地域の事業者による関連商品の供給又は販売の適時性及び実行可能性などの要素を総合的に考慮することができる。
プラットフォームに関わる関連地域市場を分析し、定義する場合は、需要者の多くが商品を選択する実際の地域、需要者の言語嗜好及び消費習慣、関連法律・法規の要件、他の地域における競争者の現状及びその関連地域の市場参入の適時性などの要素を重点的に考慮することができる。
三、独占的協定
第十八条 人民法院は、独占禁止法第十六条に規定するその他の協同行為について認定する際に、以下の要素を総合的に考慮しなければならない。
(一)事業者の市場行為の整合性の有無
(二)事業者間の意思疎通、情報交換または伝達の有無
(三)関連市場の市場構造、競争状況、市場変化などの状況
(四)事業者が行為の整合性について合理的に解釈できるかどうか
原告が前項第一号及び第二号の予備的証拠又は第一号及び第三号の予備的証拠を提供し、事業者が協同行為を行った可能性が高いことを証明できる場合、被告は、証拠提供又は十分な説明を行い、その行為の整合性についての合理的な説明を行わなければならない。合理的な説明ができない場合、人民法院は、協同行為が成立すると認定することができる。
本条にいう合理的な説明には、事業者が市場及び競争状況の変化などに基づいて関連行為を独立して行うことも含まれる。
第十九条 独占禁止法第十七条に規定する競争関係にある事業者とは、商品の生産経営において同一の段階にあり、比較的密接な代替関係のある商品を提供し、独立した業務上の意思決定行い、法的責任を負う2以上の実際の事業者又は同一関連市場に入って競争する可能性のある潜在的な事業者を指す。
特定の事業者が他の事業者の支配権を有するか又は他の事業者に決定的な影響を及ぼすことができ、もしくは2以上の事業者が同一の第三者によって支配されるか又は決定的な影響を及ぼされ、一つの経済的実体とみなすべき場合、前項にいう競争関係にある事業者には該当しない。
第二十条 原告が、後発医薬品の申請者と後発医薬品の専利権者とが締結・実施した協定が以下の条件を同時に満たしていることを証明できる証拠を有し、当該協定が独占禁止法第十七条に規定する独占的協定に該当すると主張する場合、人民法院はこれを支持することができる。
(一)後発医薬品の専利権者が、後発医薬品の申請者に明らかに合理的でない金銭又はその他の形態の利益補償を与えたか又はこれを与えることを約束した場合
(二)後発医薬品の申請者が、後発医薬品の専利権の有効性について異議を申し立てないか又は後発医薬品の関連市場への参入を遅らせることを約束した場合。
被告が、前項にいう利益補償が、後発医薬品の専利に関する紛争解決費用を補うためだけのものであることを証明する証拠がある、又はその他の正当な理由がある、もしくは当該協定が独占禁止法第二十条の規定に合致し、それが独占禁止法第十七条に規定する独占的協定に該当しないと主張する場合、人民法院はこれを支持しなければならない。
第二十一条 訴えの対象である独占的行為が、独占禁止法第十八条第一項第一号、第二号に規定する独占的協定に該当する場合、被告は当該協定が競争の排除・制限効果を有しないことについて挙証責任を負わなければならない。
第二十二条 人民法院は、独占禁止法第十八条第一項と第二項の規定に基づいて訴えられた独占的協定が競争の排除・制限効果を有するかどうかを審査・認定する場合、以下の要素を総合的に考慮することができる。
(一)被告の関連市場における市場支配力と協定の関連市場に対する類似する不利な競争効果の累積作用
(二)協定が、市場参入障壁を高め、より効率的な事業者又はビジネスモデルへの抑制、ブランド間またはブランド内競争の制限などの競争に不利な効果をもたらしているかどうか
(三)協定がフリーライドの防止、ブランド間競争の促進、ブランドイメージの維持、販売前又は販売後のサービスレベルの向上、イノベーションの促進など競争に有利な効果を有し、かつ当該効果の実現に必須であること
(四)その他考慮される要因
提出された事件の証拠によって十分証明できる競争に有利な効果が、明らかに不利な効果を超えるものである場合、人民法院は、当該協定が競争の排除・制限効果を有しないと認定しなければならない。
第二十三条 訴えの対象である独占的協定が次の各号に掲げる状況のいずれかに該当し、原告が独占禁止法第十八条第一項の規定に基づき被告が法的責任を負うべきであると主張する場合、人民法院はこれを支持しない。
(一)協定が事業者と取引の相手方との間の代理協定であり、かつ代理店は如何なる実質的な商業上又は経営上のリスクも負わない場合
(二)被告の関連市場における市場シェアが国務院の独占禁止法執行機関によって規定される基準より低く、かつ国務院の独占禁止法執行機関によって規定されるその他の条件を満たす場合
第二十四条 事業者がデータ、アルゴリズム、技術などの手段を利用して意思疎通、情報交換または伝達を行う場合、もしくはデータ、アルゴリズム、技術、プラットフォーム規則やその他の手段を利用して行為の整合性を実現し、訴えの対象である独占的協定を締結し、実施した場合、人民法院は、独占禁止法第十七条の規定に基づいて審査・認定することができる。
事業者がデータ、アルゴリズム、技術、プラットフォーム規則やその他の手段を利用して、商品の再販売価格などの限定的または自動的な設定を実現し、訴えの対象である独占的協定を締結し、実施した場合、人民法院は、独占禁止法第十八条の規定に基づいて審査・認定することができる。
第二十五条 プラットフォーム運営者とプラットフォーム内事業者との協議において、プラットフォーム内事業者が当該プラットフォーム上で他の取引ルートと同一又はそれ以上に有利な取引条件を提供するよう要求する場合、原告の訴訟請求及び事件の具体的な状況に応じて、人民法院は状況を区別して以下の処理を行うことができる。
(一)プラットフォーム運営者とプラットフォーム内事業者との間に競争関係がある場合は、独占禁止法第十七条の規定に基づいて審査・認定する
(二)プラットフォーム運営者とプラットフォーム内事業者との間に競争関係がない場合は、独占禁止法第十八条または第十九条の規定に基づいて審査・認定する
(三)原告が、プラットフォーム運営者が市場支配的地位を濫用したと主張する場合は、独占禁止法第二十二条、電子商取引法第二十二条の規定に基づいて審査・認定する
(四)原告が、プラットフォーム運営者が電子商取引法第三十五条の規定に違反していると主張する場合は、同条の規定に基づいて処理する
第二十六条 事業者、事業者団体などにより組織されたその他の事業者が、独占的協定を締結・実施し、原告に損失を与え、原告が民法典第千百六十八条の規定に基づいて、組織行為を実施した事業者、事業者団体などと独占的協定を締結・実施したその他の事業者が連帯責任を負うと主張する場合、人民法院はこれを支持しなければならない。
事業者、事業者団体などが、その他の事業者が独占的協定を締結・実施するための実質的な援助を提供し、原告に損失を与え、原告が民法典第千百六十九条第一項の規定に基づいて、援助行為を提供した事業者、事業者団体などと独占的協定を締結・実施した
その他の事業者が連帯責任を負うと主張する場合、人民法院はこれを支持しなければならない。ただし、事業者、事業者団体などが、その他の事業者が関連協定を締結・実施したことを知らず、かつ知り得ないことを証明できる場合は、この限りではない。
前項にいう実質的な援助とは、独占的協定の締結又は実施に直接的に重要な促進効果を有する、違法意図の発生の誘導、便利条件の提供、情報ルートへの充当、懲罰実施の幇助などの行為をいう。
第二十七条 被告が、独占禁止法第二十条第一項第一号乃至第五号の規定に基づいて抗弁を提出する場合、以下の事実を証明する証拠を提供しなければならない。
(一)訴えの対象である独占的協定が、関連する目的又は効果を実現できること
(二)訴えの対象である独占的協定が、関連する目的又は効果の実現には必須である
こと
(三)訴えの対象である独占的協定が、関連市場の競争を厳しく制限するものではな
いこと
(四)消費者が、これにより生じる利益を分け合うことができること
四、市場支配的地位の濫用
第二十八条 原告は、訴えの対象である独占的行為が独占禁止法第二十二条第一項に規定する市場支配的地位の濫用に該当すると主張する場合、被告が関連市場内において支配的地位を有すること及び被告が市場支配的地位を濫用したことについての挙証責任を負わなければならない。被告は、その行為が正当性を有することを理由に抗弁を行う場合には、挙証責任を負わなければならない。
第二十九条 原告が、事業者が次の各号に掲げる状況のいずれかに該当することを証明する証拠を有する場合、人民法院は、具体的事件における関連市場の構造及び実際の競争状況に従い、関連する市場経済の規律などの経済学の知識と併せて、事業者が関連市場において支配的地位を有すると初歩的に認定することができるが、反証するに足る反対証拠がある場合はこの限りではない。
(一)事業者が長期間にわたって市場競争水準より明らかに高い価格を維持しており、または長期間にわたって商品の品質が明らかに低下しているにも関わらずユーザーの大量流失がなく、かつ関連市場における競争、革新及び新規参入者が明らかに不足していること
(二)事業者が他の事業者より明らかに高い市場シェアを長期間にわたって維持しており、かつ関連市場における競争、革新及び新規参入者が明らかに不足していること
原告は、被告が対外的に発表した情報を、被告が市場支配的地位を有することを証明するための初歩的証拠とすることができるが、反証するに足る反対証拠がある場合は、この限りではない。
第三十条 独占禁止法第二十三条及び第二十四条にいう「関連市場における事業者の市場占有率」は、訴えの対象である独占的行為が行われた時点で一定期間内の関連市場における事業者の関連商品の取引額、取引量、生産能力その他の指標が関連市場に占める割合に基づいて決定することができる。
人民法院は、関連市場におけるプラットフォーム運営者の市場シェアを認定する場合、取引額、アクティブユーザー数、ビジネスユーザー数、ユーザーの使用時間数、訪問回数、クリック回数、データ資産数、または関連市場における実際の競争状況を反映できるその他の指標を計算の基準として採用することができる。
第三十一条 原告が、公的な企業又は法により独占的地位を有するその他の事業者が市場支配的地位を濫用したと主張する場合、人民法院は、市場構造及び競争状況に関する具体的な状況に応じて、被告が関連市場において支配的地位を有すると認定することができるが、反証するに足る反対証拠がある場合は、この限りではない。
第三十二条 人民法院は、独占禁止法第二十三条の規定に基づいてプラットフォーム運営者の市場支配的地位を認定する際に、以下の要素を重点的に考慮することができる。
(一)プラットフォームのビジネスモデル及びプラットフォームの事業者が実際に受けた競争制約
(二)プラットフォーム運営者の関連市場における市場シェア及び当該市場シェアの継続期間
(三)プラットフォームの運営に顕著なネットワーク効果、規模効果、範囲効果などがあるか
(四)プラットフォーム運営者が把握している関連データ、アルゴリズム、技術などの状況
(五)プラットフォーム運営者の隣接市場に与えた影響
(六)ユーザー又はプラットフォーム内事業者のプラットフォーム運営者に対する依存度及びその牽制能力、ロックイン効果、利用習慣、複数のプラットフォームの同時利用状況、他のプラットフォーム運営者への切り替えコストなど
(七)他の運営者の関連市場への参入意欲、能力及び直面する規模要件、技術要件、政策・法的制限などの市場参入の障壁
(八)関連市場の革新及び技術的変化状況
(九)その他考慮すべきプラットフォーム運営に係る要素
第三十三条 人民法院は、独占禁止法第二十三条の規定に基づいて訴えの対象である知的財産権濫用事業者の市場支配的地位を認定する際に、以下の要素を重点的に考慮することができる。
(一)関連市場内における特定の知的財産権の客体の代替可能性、代替客体の数、代替客体への切り替えコスト
(二)当該特定の知的財産権の使用によって提供される商品の代替可能性と当該商品の市場シェア
(三)取引の相手方が当該特定の知的財産権を保有する事業者に対して牽制を働かせる能力
(四)関連市場の革新及び技術的変化状況
(五)その他考慮すべき知的財産権の行使に関連する要素
人民法院は、知的財産権の保有のみを根拠に市場支配的地位を推定することはできないとする事業者の主張を支持するものとする。
第三十四条 独占禁止法第二十四条第一項第二号及び第三号に基づき共同で市場支配的地位を有すると推定される事業者が、以下のいずれかの状況にあることを証明する証拠があり、上記推定を反証する場合、人民法院は、これを支持するものとする。
(一)当該2つ以上の事業者の間に行動の整合性がなく、かつ実質的な競争が存在する
(二)当該2つ以上の事業者が、全体として関連市場において他の事業者からの有効な競争制限を受けている
第三十五条 事業者が以下の条件を同時に満たす場合、人民法院はそれが独占禁止法第二十二条に規定する市場支配的地位の濫用行為に該当すると判断することができる。
(一) 関連市場における支配的地位を有する
(二) 訴えの対象である独占的行為を実施した
(三) 訴えの対象である独占的行為は、競争を排除または制限する効果がある
(四) 訴えの対象である独占的行為の実施は正当な理由に欠ける
第三十六条 人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第一号に規定する事業者が「不公平な高価格で商品を販売し、または不公平な低価格で商品を購入した」と判断する場合、以下の要素を総合的に考慮することができる。
(一) 当該商品の収益率が、競争市場における合理的な収益率から著しく乖離しているかどうか
(二)当該商品の価格が、原価と競争条件下での妥当な利益の合計から著しく逸脱しているかどうか
(三)事業者が取引の相手方に対して商品を販売または購入する価格が、当該事業者が上流及び下流市場で同一または比較可能商品を販売または購入する価格より著しく高いまたは低いか
(四) 事業者が取引の相手方に対して商品を販売または購入する価格が、他の事業者が同一または類似の条件下で同一または比較可能商品を販売または購入する価格より著しく高いまたは低いか
(五) 事業者が取引の相手方に対して商品を販売または購入する価格が、当該事業者が他の地域の市場において同一または類似の条件下で同一または比較可能商品を販売または購入する価格より著しく高いまたは低いか
(六) 事業者が取引の相手方に商品を販売する際の価格の上昇幅が、当該事業者のコストの上昇幅よりも著しく大きいかどうか、または商品を購入する際の価格の下落幅が、取引の相手方のコストの下落幅よりも著しく大きいかどうか。
(七) 当該高値または安値の持続期間
(八) 考慮されるその他の要素
前項第四号及び第五号の同一又は類似の条件の判断に当たっては、ビジネスモデル、取引ルート、需給状況、規制環境、取引プロセス、コスト構造、取引状況、プラットフォームの種類などの要素を考慮することができる。
第三十七条 市場支配的地位を有する事業者が、次の各号に掲げる状況のいずれかに該当する場合、人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第二号に規定する「コストより低い価格で商品を販売する」に該当すると初歩的に認定することができる。
(一)事業者が長期間にわたって、平均変動費又は平均回避可能費用を下回る価格で継続的に商品を販売した場合
(二)事業者が長期間にわたって、平均変動費又は平均回避可能費用よりも高いが、平均総費用よりも低い価格で継続的に商品を販売し、かつ同等に効率的な他の事業者を関連市場における有効な競争から排除・制限しようとする明確な意図を有することを証明するその他の証拠がある場合
前項の規定に従って、プラットフォーム運営者がコストを下回る価格で商品を販売することを認定する場合、更に当該プラットフォームに関わる多角的市場における関連市場間の原価連関の状況及びその合理性も考慮しなければならない。
次の各号に掲げる状況のいずれかに該当する場合、人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第二号に規定する正当な理由に該当すると認定することができる。
(一)低価格で生鮮商品、季節商品、廃盤商品、賞味期限切れ間近の商品又は滞貨商品などを処分する場合
(二)債務返済、生産の変更、廃業などにより商品を低価格で販売する場合
(三)新商品の販促、新規事業の開発、新規ユーザーの獲得を目的とした、合理的
な期間内に低価格で販売促進する場合
(四)その行為が正当性を有することを証明できるその他の理由がある場合
第三十八条 市場支配的地位を有する事業者が以下の条件を同時に満たす場合、人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第三号に規定する「取引の相手方との取引の実施を拒絶する」に該当すると初歩的に判断することができる。
(一)事業者が取引の相手方との取引を直接拒否した場合、取引の相手方にとって明らかに受け入れがたい取引条件を提示した場合、または取引を不当に遅延させた結果、取引が成立しなかった場合
(二) 事業者が取引の相手方と取引を行うことが、経済的、技術的、法的かつ安全上実行可能である
(三) 川上または川下市場における競争を排除または制限する取引拒否行為
市場支配的地位を有する事業者が、正当な理由なく、自社の商品、プラットフォーム又はソフトウェアシステムなどと他の事業者が提供する特定の商品、プラットフォーム又はソフトウェアシステムなどと互換性を持たせることを拒絶し、自社の技術、データ若しくはプラットフォーム・インターフェースの開放を拒絶し、又は自己の知的財産権の使用許諾を拒絶する場合、人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第三号の規定に従って判断を下す際に、以下の要素を総合的に考慮することができる。
(一) 当該事業者による互換性、開放性、ライセンス供与を実施することの、経済的、技術的、法的、安全上の実現可能性
(二) 当該商品、プラットフォームまたはソフトウェアシステム、技術、データ、知的財産権などの代替可能性、及び再構築のコスト
(三) 他の事業者が、川上または川下市場で効果的に競争を実施するために、当該事業者の商品、プラットフォームまたはソフトウェアシステム、技術、データ、知的財産権などにどの程度依存しているか
(四) 互換性、開放性、ライセンスの拒否が、革新や新商品の導入に与える影響
(五) 互換性、開放性またはライセンスの実施が、当該事業者自身の事業活動や合
法的利益に及ぼす影響
(六) 互換性、開放性またはライセンスの拒否が、関連市場における有効な競争を実質的に排除・制限するかどうか
(七) 考慮されるその他の要素
次の各号に掲げる状況のいずれかに該当する場合、人民法院は、それが独占禁止法第二十二条第一項第三号に規定する正当な理由に該当すると認定することができる。
(一)不可抗力や状況の変化など客観的な理由により取引が実施できない、または取引の条件や結果が明らかに不公平である場合
(二)取引の相手方の経営状況が著しく悪化し、財産を移転し、または債務を免れるために資金を持ち逃げするなどして取引の履行能力を喪失するか、または喪失するおそれがある、もしくは信用状態が悪化し、取引上の信用が失墜し、または違法な犯罪行為を行い、取引の安全性に影響を及ぼす場合
(三)取引の相手方が適切な取引条件を受け入れることを拒否した場合、または事業者の示した合理的な要請に応じなかった場合
(四)取引の相手方との取引が、当該事業者の合法的な利益を著しく損なう場合
(五)その行為が正当性を有することを証明できるその他の理由がある場合
第三十九条 市場支配的地位を有する事業者が、以下の条件を同時に満たす場合、人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第四号に規定する「取引の相手方が自己とのみ取引を行うように制限する、又はそれが指定する事業者とのみ取引を行うように制限する」ことに該当すると初歩的に認定することができる。
(一)事業者が、取引の相手方に対して自己とのみ取引を行うように制限し、又は指定する事業者とのみ取引を行うように直接制限し又は取引条件の設定や取引ガイドラインの提供などの方法で形を変えた制限を行い、もしくは取引の相手方が特定の事業者と取引を行ってはならないと制限すること
(二)取引制限行為が関連市場における競争を排除・制限すること
取引制限行為が競争の排除・制限効果を有するかどうかを認定するには、以下の要素
を総合的に考慮することができる。
(一)取引制限の範囲、程度及び持続期間
(二)取引制限が、市場参入への障壁を高め、又は競争者のコストを増加させること
により、市場ブロッキング効果を生じさせるかどうか
(三)被告がプラットフォーム運営者である場合、取引制限の対象となるプラット
フォーム内事業者の代替可能性及びプラットフォームユーザーが複数の代替プラット
フォームを利用する状況並びに他のプラットフォームへの切り替えコスト
(四)取引制限が、取引の相手方から自らの選択権を実質的に奪うかどうか
(五)その他の考慮すべき要素
次の各号に掲げる状況のいずれかに該当する場合、人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第四号に規定する正当な理由に該当すると認定することができる。
(一)取引の相手方及び消費者の利益を保護するために必要である場合
(二)商品の安全要求事項を満たすために必要である場合
(三)知的財産権又はデータセキュリティを保護するために必要である場合
(四)特定の取引の特定のインプットを保護するために必要である場合
(五)プラットフォームの合理的なビジネスモデルを維持するために必要である場合
(六)プラットフォーム全体に消極的な影響を及ぼす不正行為を防止するために必要である場合
(七)その行為が正当性を有することを証明できるその他の理由がある場合
第四十条 市場支配的地位を有する事業者が、以下の条件を同時に満たす場合、人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第五号に規定する「商品の抱合せ販売」に該当すると初歩的に認定することができる。
(一)事業者は、別々に販売できる異なる商品をバンドルしている場合
(二)取引の相手方が自己の意志に反して抱合せ販売商品を受け入れさせられた
場合
(三)抱合せ販売行為が関連市場における競争を排除・制限する場合
独占禁止法第二十二条第一項第五号に規定する「その他の不合理な取引条件の付加」には、次の各号に掲げる状況が含まれる。
(一)取引の成立、サービス提供方法、支払方法、販売地域と対象、アフターサービス保証などに不合理な制限を課す場合
(二)取引の対価に加えて、合理的根拠のない費用又は利益を要求する場合
(三)関連する取引と関連性を欠く取引条件を付す場合
(四)必要でないユーザー情報またはデータを強制的に収集する場合
(五)取引の相手方の技術向上、新製品の研究開発能力を制限するなど、非競争的な義務を課す場合
次の各号に掲げる状況のいずれかに該当する場合、人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第五号に規定する正当な理由に該当すると認定することができる。
(一)正当な取引習慣、消費習慣又は商業慣習に合致する場合
(二)取引の相手方及び消費者の利益を保護するために必要である場合
(三)商品の安全要件を満たすために必要である場合
(四)特定の技術を適切に実施するために必要である場合
(五)プラットフォームの正常動作を維持するために必要である場合
(六)その行為が正当性を有することを証明できるその他の理由がある場合
第四十一条 市場支配的地位を有する事業者が、以下の条件を同時に満たす場合、人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第六号に規定する「条件の同じ取引の相手方に対して、取引価格などの取引条件上、差別的待遇を行う」ことに該当すると初歩的に認定することができる。
(一)事業者が、同一の商品について取引の相手方に対し、取引価格などの取引条件上、差別的待遇を行う場合
(二)事業者のその他の取引の相手方に比べ、当該取引の相手方は取引の安全性、取引コスト、規模及び能力、信用状況、取引プロセス、取引継続期間などの面おいて取引に影響を与える実質的な差異がない場合
(三)差別的待遇行為が、関連市場における競争を排除・制限する場合
市場支配的地位を有する事業者が取引の相手方に対して商品を販売または購入する価格が、当該事業者が上流及び下流市場において同一の商品を販売または購入する価格より高くまたは低く、その結果、取引の相手方に対して、同程度の効率性を有する取引の相手方が関連市場において効果的な競争を行うことを排除または制限するのに十分な利潤の圧迫をもたらす場合、人民法院は、当該事業者が前項にいう差別的待遇に該当すると初歩的に認定することができる。
差別的待遇が競争の排除・制限効果を有するかどうかを認定する際には、以下の要素を総合的に考慮することができる。
(一)事業者と競争の相手方との間の競争を排除・制限するかどうか
(二)取引の相手方を競争上不利な立場に置き、かつ所在する関連市場における競争を排除・制限するかどうか
(三)消費者の利益及び社会の公共利益を損なうかどうか
(四)考慮されるその他の要素
次の各号に掲げる状況のいずれかに該当する場合、人民法院は、独占禁止法第二十二条第一項第六号に規定する正当な理由に該当すると認定することができる。
(一)取引の相手方の実際の需要に応じて差別的待遇を行いかつ正当な取引習慣、消費習慣又は商業慣習に合致する場合
(二)合理的な期間内に新規ユーザーの初回取引を行うためのプロモーション活動を実施する場合
(三)公平、合理的かつ非差別的なプラットフォーム規則に基づいて実施されるランダムな取引
(四)その行為が正当性を有することを証明できるその他の理由が存在する場合
第四十二条 プラットフォーム内事業者が、原告として訴訟を提起し、プラットフォーム運営者がデータ、アルゴリズム、技術、プラットフォーム規則などを利用して市場支配的地位の濫用又はその他の違法行為を実施したと主張する場合、人民法院は、原告の訴訟請求及び事件の具体的な事実に応じて、以下の状況を区別して処理を行うことができる。
(一)プラットフォーム運営者が懲罰的又はインセンティブ的な措置などを通じてプラットフォーム内事業者の取引を制限し、プラットフォーム内事業者に不合理な取引条件を付し、同一条件のプラットフォーム内事業者に対して取引価格などの取引条件に差別的待遇などを行っている場合において、当該プラットフォーム運営者が市場における支配的地位を濫用していると原告が主張する場合、独占禁止法第二十二条、電子商取引法第二十二条の規定に基づいて審査・認定を行う
(二)原告が、前号の行為を実施したプラットフォーム運営者が電子商取引法第三十五条の規定に違反していると主張する場合、同条の規定に基づいて処理する
五、民事責任
第四十三条 被告が独占的行為を実施し、原告に損失を与えた場合、人民法院は、原告の訴訟請求及び調査を経て明らかになった事実に基づき、法に従って、被告に対して侵害差止、損害賠償などの民事責任を負う旨の判決を下すことができる。
訴えの対象である独占的行為の停止を被告に命じる旨の判決では、競争の排除・制限効果を除外するのに不十分である場合、人民法院は、原告の訴訟請求及び事件の具体的な状況に応じて、被告に競争を回復するための必要な行為を行う法的責任を負わせる旨の判決を命じることができる。
第四十四条 独占的行為により原告が被った損失には、直接的な損失と、その行為が起こらなかった場合と比較して減少した逸失利益が含まれる。
独占的行為により原告が被った損失を確定させる際には、以下の要素を考慮することができる。
(一)訴えの対象である独占的行為の実施前又は終了後と実施期間中の関連市場における商品価格、経営コスト、利益及び市場シェアなど
(二)独占的行為の影響を受けていない比較可能な市場における商品価格、経営コスト、利益など
(三)独占的行為の影響を受けていない比較可能な事業者の商品価格、経営コスト、利益、市場シェアなど
(四)訴えの対象である独占的行為により原告が被った損失を合理的に証明できる
その他の要素
原告が訴えの対象である独占的行為により損失を被ったことを証明する証拠があるものの、前項の規定に基づく具体的な損失金額の確定が困難である場合、人民法院は、原告の主張及び事件の証拠に基づき、当該独占的行為の性質、程度、継続期間、得られた利益などの要素を考慮し、適宜合理的な賠償額を決定することができる。
第四十五条 人民法院は、原告の訴訟請求及び事件の具体的な状況に基づいて、市場調査費用、経済分析費用、弁護士費用などの合理的な費用を含む、原告が独占的行為の調査、阻止のために支払った合理的な支出を損害賠償範囲に計上することができる。
第四十六条 訴えの対象である複数の独占的行為が互いに関連し、同一の関連市場または複数の関連市場において原告に不可分の全体的な損失をもたらした場合、人民法院は、損失を確定する際、全体的に考慮しなければならない。
訴えの対象である複数の独占的行為がそれぞれ独立し、異なる関連市場において原告に損失をもたらした場合、人民法院は損失を確定する際に個別に考慮することができる。
第四十七条 水平的独占的協定の事業者が、当該協定を締結・実施した他の事業者を被告として、独占禁止法第六十条の規定に基づいて、当該協定の参加期間中に生じた損失の賠償請求を行う場合、人民法院はこれを支持しないものとする。
第四十八条 当事者が、訴えの対象である独占的行為に関わる契約、または事業者団体の規約、決議、決定などが独占禁止法またはその他の法律、行政法規の強行規定に違反するため無効であると主張する場合、人民法院は民法典第百五十三条の規定に従って審査・認定するものとする。
訴えの対象である独占的行為に関わる契約または事業者団体の規約、決議または決定の条項の一部が独占禁止法またはその他の法律または行政法規の強行規定に違反するため無効である場合、当事者が、当該条項の一部と密接に関連し、独立して存在する意義を有さず、または訴えの対象である独占的行為の実施を容易にするその他の条項も同時に無効であると主張する場合、人民法院はこれを支持することができる。
第四十九条 独占的行為から生じた損害賠償請求権の訴訟時効期間は、権益が侵害されたこと及び賠償義務者を原告が知り又は知り得る日から起算するものとする。
原告が、独占禁止法執行機関に対して、訴えの対象である独占的行為について通報した場合、訴訟時効はその通報日から中断されるものとする。独占禁止法執行機関が立件しない場合又は事件取消の決定又は調査終了の決定を下した場合、訴訟時効の期間は当該事由を原告が知り又は知り得る日から再計算されるものとする。
独占禁止法執行機関が、調査の後に、独占的行為を構成することを認定した場合、訴訟時効期間は、独占的行為を構成することを認定する旨の独占禁止法執行機関による処理決定が法的効力を生じたことを原告が知り又は知り得る日から再計算するものとする。
六、附則
第五十条 独占民事事件の審理において、人民法院は、訴えの対象である独占的行為発生時点で施行されていた独占禁止法を適用する。訴えの対象である独占的行為が改正独占禁止法の施行前に発生し、改正独占禁止法の施行後まで継続し、または損害の結果が現れた場合は、改正独占禁止法を適用する。
第五十一条 本解釈は、2024年7月1日から施行する。最高人民法院の「独占的行為に起因する民事紛争事件の審理における法律の適用に関する若干の問題に関する規定」(法釈[2012]第5号)は、同時に廃止されるものとする。
本解釈の施行後、人民法院の審理中にある第一審、第二審の事件には、本解釈を適用する。
本解釈施行前に既に発効した判決が下され、当事者が再審又は裁判監督手続に基づいた再審を請求した事件には、本解釈を適用しない。
出所:ジェトロウェブサイト
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/interpret/20240701.pdf