「最高人民法院による『中華人民共和国反不正競争法』の適用における若干問題に関する解釈』」は 2022 年 1 月 29 日に最高人民法院審判委員会第 1862 回会議にて可決された。ここに公布し、2022 年 3 月 20 日より施行する。
最高人民法院
2022 年 3 月 16 日
法釈〔2022〕9 号
最高人民法院による「中華人民共和国反不正競争法」の適用における
若干問題に関する解釈
(2022 年 1 月 29 日最高人民法院審判委員会
第 1862 回会議にて可決、2022 年 3 月 20 日より施行)
不正競争行為により生じた民事紛争事件を正しく審理するために、「中華人民共和国民法典」「中華人民共和国反不正競争法」「中華人民共和国民事訴訟法」等の関連の法律規定に基づき、裁判実務を踏まえ、本解釈を制定する。
第一条 事業者が市場競争の秩序をかく乱し、その他事業者又は消費者の合法的な権益を害し、かつ反不正競争法第二章及び専利法、商標法、著作権法等の規定に違反する状況以外の情状に該当する場合には、人民法院は反不正競争法第二条を適用して認定を行うことができる。
第二条 事業者との間に、生産・経営活動における取引機会の争奪、競争優位の損害等の関係が存在しうる市場主体について、人民法院は、反不正競争法第二条に定める「その他事業者」と認定することができる。
第三条 特定の商業分野で普遍的に遵守され、認められている行為規範について、人民法院は反不正競争法第二条に定める「商業道徳」と認定することができる。
人民法院は、案件の具体的な状況を踏まえ、業界規則又は商慣習、事業者の主観的な状態、取引相手の選択意向、また消費者権益、市場競争の秩序及び公共の利益に対する影響等の要素を総合的に考慮し、事業者が商業道徳に反しているか否かを、法により判断しなければならない。
人民法院は、事業者が商業道徳に違反しているか否かを認定するにあたり、さらに業界主管部門、業界団体又は自主規制機関の制定した就業規則、技術規範、自主規制規約等を参考にすることができる。
第四条 一定の市場の知名度を有しかつ商品の出所を区別する顕著な特徴を有する標識について、人民法院は、反不正競争法第六条に定める「一定の影響力のある」標識と認定することができる。
人民法院は、反不正競争法第六条に定める標識が一定の市場の知名度を有するか否かを認定するにあたり、中国国内の関連公衆における周知度、商品販売の期間、区域、額及び対象、宣伝の継続期間、程度及び地域範囲、標識の保護状況等の要素を総合的に考慮しなければならない。
第五条 反不正競争法第六条に定める標識が、次の情状のいずれかに該当する場合、人民法院はそれが商品の出所を区別する顕著な特徴を有しないと認定しなければならない。
(一)商品の通用名称、図形、型番
(二)商品の品質、主要原料、機能、用途、重量、数量及びその他特徴のみを直接表す標識
(三)商品自体の性質によって構成された形状、技術的効果を得るために有すべき商品形状、及び商品の実質的価値を具有させる形状
(四)その他顕著な特徴に欠ける標識
前項(一)、(二)、(四)に定める標識が使用を経て顕著な特徴を取得し、かつ一定の市場の知名度を有し、当事者が反不正競争法第六条の規定に基づく保護を請求した場合、人民法院は、これを支持しなければならない。
第六条 商品を客観的に記述、説明するために、次に掲げる標識を正当に使用し、当事者が反不正競争法第六条に定める状況に属する旨を主張した場合、人民法院は、これを支持しない。
(一)本商品の通用名称、図形、型番を含む
(二)商品の品質、主要原料、機能、用途、重量、数量及びその他特徴を直接表す
(三)地名を含む
第七条 反不正競争法第六条に定める標識又はその顕著な識別部分が商標法第十条第一項に定める商標として使用してはならない標章に属し、当事者が反不正競争法第六条の規定に基づき保護を請求した場合、人民法院は、これを支持しない。
第八条 事業者の営業場所の装飾、営業用道具のデザイン、営業人員の服飾等から構成される、独自のスタイルを有する全体的な営業イメージについて、人民法院は、反不正競争法第六条(一)に定める「装飾」と認定することができる。
第九条 市場主体登記管理部門が法により登記した企業の名称、及び中国国内で商業的に使用する海外企業の名称について、人民法院は、反不正競争法第六条(二)に定める「企業名称」と認定することができる。
一定の影響力のある個人事業主、農民専業合作社(連合社)及び法律、行政法規に定めるその他市場主体の名称(略称、商号等を含む)について、人民法院は、反不正競争法第六条(二)に従って認定を行うことができる。
第十条 中国国内で一定の影響力のある標識を商品、商品の包装若しくは容器、商品取引文書又は広告宣伝、展示及びその他商業活動に使用し、商品の出所の識別に用いる行為について、人民法院は、反不正競争法第六条に定める「使用」と認定することができる。
第十一条 事業者が他人の一定の影響力のある企業名称(略称、商号等を含む)、社会組織名(略称等を含む)、氏名(ペンネーム、芸名、訳名等を含む)、ドメイン名の要部、ウェブサイト名、ウェブページ等と類似する標識を無断で使用し、他人の商品である又は他人と特定関係があると誤認させた場合であって、当事者が反不正競争法第六条(二)、(三)に定める状況に属する旨を主張したときは、人民法院は、これを支持しなければならない。
第十二条 人民法院は、反不正競争法第六条に定める「一定の影響力のある」標識と同一である又は類似すると認定する際には、商標の同一又は類似判断の原則及び方法を参照することができる。
反不正競争法第六条に定める「他人の商品である又は他人と特定関係があると誤認させる」場合には、他人と商業連合、使用許諾、商業命名、推奨広告等の特定関係があると誤認させることを含む。
同一の商品に同一又は視覚上、基本的に差異のない商品名称、包装、装飾等の標識を使用する場合、他人の一定の影響力のある標識との混同を生じるに足りるものとみなさなければならない。
第十三条 事業者が次に掲げる混同行為のいずれかを実施し、他人の商品である又は他人と特定関係があると誤認させるに足りる場合、人民法院は、反不正競争法第六条(四)に従って認定を行うことができる。
(一)反不正競争法第六条(一)、(二)、(三)に定める以外の「一定の影響力のある」標識を無断で使用した場合
(二)他人の登録商標、未登録の馳名商標を企業名称における商号として使用し、公衆に誤認を生じさせた場合
第十四条 事業者が反不正競争法第六条の規定に違反する標識を付した商品を販売し、他人の商品である又は他人と特定関係があると誤認させた場合であって、当事者が反不正競争法第六条に定める状況に属する旨を主張したときは、人民法院は、これを支持しなければならない。
前項に定める権利侵害商品であると知らず販売した場合であって、当該商品が、自己が適法に取得したものである旨を立証でき、かつ提供者について説明し、事業者が賠償責任を負わない旨を主張したときは、人民法院は、これを支持しなければならない。
第十五条 他人による混同行為の実施のために、故意に、保管、輸送、郵送、印刷、隠匿、経営場所等の便利な条件を提供し、当事者が民法典第一千一百六十九条第一項に基づく認定を請求したときは、人民法院は、これを支持しなければならない。
第十六条 事業者が商業宣伝の過程において、真実でない商品関連情報を提供し、関連公衆を欺罔、誤認を生じさせた場合、人民法院は、反不正競争法第八条第一項に定める虚偽の商業宣伝と認定しなければならない。
第十七条 事業者が次に掲げる行為のいずれかに該当し、関連公衆を欺瞞し、誤認を生じさせた場合、人民法院は、反不正競争法第八条第一項に定める「人々を誤解させる商業宣伝」と認定することができる。
(一)商品について偏った宣伝又は比較を行った
(二)科学的に定説となっていない観点、現象等を、定説の事実として商品宣伝に用いた
(三)多義的な言葉を使用して商業宣伝を行った
(四)その他、人々を誤解させるに足りる商業宣伝行為
人民法院は、日常生活の経験、関連公衆の一般的注意力、誤解を生じた事実及び宣伝対象の実際の状況等の要素に基づき、人々を誤解させる商業宣伝行為について認定を行わなければならない。
第十八条 当事者は、事業者が反不正競争法第八条第一項の規定に違反した旨を主張し、かつ損害賠償を請求した場合、その虚偽又は人々を誤解させる商業宣伝行為により損失を被ったことを立証しなければならない。
第十九条 当事者は、事業者が反不正競争法第十一条に定める商業中傷行為を実施した旨を主張する場合、当該商業中傷行為の特定損害対象であることを立証しなければならない。
第二十条 事業者が他人の捏造した虚偽情報又は誤導的な情報を散布し、競争相手の商業的信用、商品の評判を害した場合、人民法院は、反不正競争法第十一条に従って認定を行わなければならない。
第二十一条 その他事業者及びユーザーの同意を得ずに直接発生した「特定のページに遷移」について、人民法院は、反不正競争法第十二条第二項(一)に定める「強制的に特定のページに遷移」したと認定しなければならない。
リンクのみを挿入し、特定のページへの遷移がユーザーによって引き起こされた場合、人民法院は、リンク挿入の具体的な方式、合理的な理由があるか否か並びにユーザーの利益及びその他事業者の利益に対する影響等の要素を総合的に考慮し、当該行為が反不正競争法第十二条第二項(一)の規定に反しているか否かを認定しなければならない。
第二十二条 事業者が事前に明確に提示せずかつユーザーの同意を得ずに、変更、終了、アンインストールをユーザーに誤認、欺瞞、強制する等の方式により、その他事業者の適法に提供するネットワーク製品又はサービスを悪意により妨害又は破壊した場合、人民法院は、反不正競争法第十二条第二項(二)に従って認定を行わなければならない。
第二十三条 反不正競争法第二条、第八条、第十一条、第十二条に定める不正競争行為について、権利者が権利侵害により受けた実際の損失、侵害者が権利侵害により獲得した利益の確定が難しい場合において、当事者が反不正競争法第十七条第四項に基づき損害賠償額を確定する旨を主張したときは、人民法院は、これを支持しなければならない。
第二十四条 同一の侵害者が同一の主体に対して同一の期間及び地域範囲に実施した侵害行為について、人民法院が著作権、専利権又は登録商標専用権等の侵害を既に認定し、民事責任を負う判決を下しており、また、当該行為が不正競争を構成することを理由に、民事責任の負担を同一の侵害者に請求した場合、人民法院は、これを支持しない。
第二十五条 反不正競争法第六条の規定に基づき、当事者がその企業名称の使用停止又は変更を被告に命じる訴訟上の請求を主張した場合であって、法によりこれを支持すべきときは、人民法院は、当該企業名称の使用停止を命じる判決を下さなければならない。
第二十六条 不正競争行為により提起された民事訴訟については、権利侵害行為地又は被告住所地の人民法院が管轄する。
当事者がオンライン購入者の任意に選択できる物品受取地のみを権利侵害行為地とすると主張した場合、人民法院は、これを支持しない。
第二十七条 不正競争行為は中華人民共和国領域外で発生したが、権利侵害の結果は中華人民共和国領域内で発生し、当該権利侵害の結果の発生地の人民法院が管轄すべきである旨を当事者が主張した場合、人民法院は、これを支持しなければならない。
第二十八条 反不正競争法の改正決定の施行後に人民法院が受理した不正競争民事事件が、当該決定施行前に発生した行為にかかわる場合、改正前の反不正競争法を適用する。当該決定施行前に発生し、当該決定施行後まで継続する行為にかかわる場合は、改正後の反不正競争法を適用する。
第二十九条 本解釈は 2022 年 3 月 20 日から施行する。「最高人民法院による不正競争民事事件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」(法釈[2007]2号)は、同時に廃止する。
本解釈の施行後にまだ結審していない事件については、本解釈を適用する。施行前に既に結審している事件については、本解釈を適用して再審することはしない。
出所:ジェトロウェブサイト
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/interpret/20220320.pdf