北京市高級裁判所《特許権侵害判定指南》修訂(2017)
一.発明、実用新案特許権の保護範囲の確定
(一)保護範囲を確定する解釈原則
1、特許権有効原則。特許権者が主張した特許権が無効にされた前に、その権利が保護されるものとし、当該特許権が特許法の関係登録条件に合致せず、無効にされるべきであることを理由に裁判してはいけない。しかし、本指南に他の規定があることを除く。
特許登録簿副本、又は特許証書及び当年の特許年費納付のレシートは特許権有効の証拠とすることができる。
2、公平原則。請求の範囲を解釈する場合に、特許権が従来技術に対する貢献を考慮し、特許請求項が限定する保護の範囲を合理的に確定して権利者の利益を保護するだけでなく、請求項の公示作用を十分に考慮し、社会公衆の信頼利益を配慮すべきであり、保護の範囲に収めるべきでない内容を特許請求の範囲に解釈してはならない。
以下に挙げる内容は保護の範囲に収めてはならないものとする:
(1)、特許の克服しようとする技術欠陥の技術案
(2)、全体的に従来技術に属する技術案
3、折衷原則。請求項を解釈するとき、請求項に記載された技術的内容を準じ、明細書と図面、従来技術、特許が従来技術に対する貢献などの要素により特許権の保護範囲を合理的に確定するものとする。特許権の保護範囲を請求項の字面意味に拘泥することができないし、特許権の保護範囲を当分野の当業者が特許の出願日前に明細書と図面を閲読して創造性労働を払わないと想到できない内容に広げることもできない。
4.発明目的に符合する原則。特許権の保護範囲を確定する際に、発明の目的、効果を達成できない技術案を請求項の保護範囲に解釈してはならない。すなわち、当業者が本分野の技術背景を合わせて明細書及び図面のすべての内容を閲覧して依然として特許の技術問題を解決できず、特許の技術効果を実現できない技術案を特許の保護範囲に解釈してはならない。
(二)解釈対象
5、発明特許権又は実用新案権侵害紛争事件を審理するには、まず、特許権の保護範囲を確定するものとする。発明又は実用新案権の保護範囲は請求の範囲に記載された技術的特徴に確定された内容を準ずるものとし、記載された技術的特徴と均等な技術的特徴に確定された内容をも含む。
特許権の保護範囲を確定する時、権利者が権利の根拠として主張する請求項を解釈するものとし、また当該請求項について技術特徴を区分すべきである。
6、特許請求の範囲が二項以上の請求項を有する場合、権利者は起訴状において具体的な請求項を明記すべきである。起訴状には記載せずまたは記載不明瞭である場合、権利者に明確してもらうべきである。釈明を経て、権利者は一審法廷の弁論終了する前に明確しなかった場合に、起訴却下と裁定することができる。
7、権利者は従属請求項で保護範囲を確定すると主張した場合、当該従属請求項に記載された付加技術的特徴及びその直接的又は間接的に引用した請求項に記載された技術的特徴により、特許権の保護範囲を確定するものとする。
8、技術的特徴とは、請求項に限定された技術案における、一定の技術的機能を独立的に執行でき、かつ相対的な独立的効果をもたらすことができる最小の技術的ユニット又はユニットの組み合わせを指す。製品技術案において当該技術的ユニットは一般に製品の部品または部品間の接続関係である。方法技術案においては当該技術的ユニットは一般に方法、ステップまたはステップ間の関係である。
9、一審判決する前に、権利者が主張した請求項が特許復審委員会に無効宣告されており、権利者はその主張した請求項を適時に変更しなかった場合には、権利者がその無効宣告された請求項に基づく起訴を却下することを裁定できる。
特許復審委員会による上記請求項が無効宣告された決定が発効した行政判決によって撤回されたことを証明することができる証拠がある場合、権利者は別途にて起訴することができる。
権利者は別途にて起訴する場合、起訴の時効期間は行政判決書の送達日から起算される。行政訴訟期間に被疑侵害行為がずっと持続していることを証明する証拠がある場合、権利者は別途に起訴する際にこれについて権利を主張できる。
10、当事者が一審判決に不服して二審裁判所に上訴を提起する場合、終審判決が下される前に、一審判決の依拠した請求項が特許復審委員会によって無効宣告され、一般に一審判決を撤回して、当該無効宣告された請求項に基づいて権利者の起訴を却下することを裁定する。しかし、権利者が無効決定に対して法定期限以内に行政訴訟を提起したことを証明できる証拠がある場合、記録された証拠、係争特許技術の難度、被告の抗弁理由などの要素を総合的に考慮し、当事者の申請により二審案件の審理中止を裁定すべきである。
特許復審委員会による上記請求項が無効宣告された決定が発効した行政判決によって撤回されたことを証明することができる証拠があり、権利者は別途にて起訴する場合、新たな事実がない場合、元の一審判決に基づいて新たに同一判決を下すべきである。
(三)解釈方法
11、特許権の保護範囲を確定する時、国務院特許行政部門が登録を公告した特許書類又はすでに法的効力を発効した特許復審審決、無効審判の審決及び関係権利付与、権利確定の行政判決書に確定された請求の範囲を準ずるものとする。請求の範囲は複数のバージョンがある場合、最終的に有効のバージョンを準ずる。
12、請求の範囲を解釈するには、当分野の普通の業者の角度から行うものとする。
当分野の普通の業者は、当業者とも称し、仮設の「人」であり、当分野におけるすべての従来技術を獲得することができ、出願日前の当分野の普通の技術知識を持ち、かつ出願日前の常軌実験手段を運用する能力を有する。
当分野の普通の業者は、具体的なある人又はある種類の人ではなく、学歴、職階、職務等級などの具体的な基準を参照するのは不適切である。当事者は当分野の普通の業者がある普通の技術知識を持つかどうか、ある常軌実験手段を運用する能力を有するかどうかについて争議があった場合、証拠を挙げて証明するものとする。
13、請求項への解釈は、明確、補完及び特定状況における改正という三つの方式があるがこれに限らず、即ち、請求項における技術的特徴に表された技術的内容がはっきりしていない場合、当該技術的特徴の意味を明確にする;請求項における技術的特徴は、理解上に欠陥があった場合、当該技術的特徴の不足を補完する;請求項における技術的特徴の間に矛盾があったなどの特定の状況において、当該技術的特徴の意味を補正する。
14、請求項に記載されたすべての技術的特徴に表された技術的内容を一つの全体的な技術案として取り扱い、独立請求項の序言部分、特徴部分、及び従属請求項の引用部分、限定部分に記載された技術特徴は保護範囲に対する限定の作用を有する。
請求項には2つ以上の並列の技術案が含まれた場合、並列技術ごとをそれぞれひとつの全体的技術案に確定すべきである。
15、請求項を解釈するには、特許明細書と図面、請求の範囲における関係請求項、係争特許とは分割出願の関係がある他の特許及び上記特許の審査履歴、発効した特許授権、権利確定裁判文書に記載された内容を利用することができる。
以上の方法で請求項の意味を明確にすることができない場合、工具書、教科書などの公知文献及び当分野の普通の業者の通常の理解により解釈することができる。
本指南にいう特許審査履歴は、特許審査、復審審判、無効審判において特許出願者または特許権者が提出した書面資料、国務院特許行政部門と特許復審委員会により発行された審査意見通知書、面接記録、口頭審理記録、発効した特許復審請求審査決定書及び特許権無効宣告請求審査決定書などを含む。
16、請求項と明細書とは不一致又は相互矛盾なところがあって、明らかに特許法第二十六条第三款、第四款の規定を違反して明細書が請求項を解釈できないことを招致した場合、当事者に特許無効審判で解決するよう通知する。当事者はこれに基づいて特許無効宣告審判を起こし、そして本案件の審理の中止を申請した場合、一般に訴訟中止を裁定できる。
当事者は明確に特許無効審判で解決したくない、又は合理的な期限内に、特許無効審判を提起していない場合、特許権有効原則により、請求項の字面の意味で確定された保護範囲を準ずるものとする。但し、当業者は請求の範囲と明細書及び図面を閲読した後、保護請求の技術案について具体的、明確的、唯一的な解釈が得られた場合、当該解釈により請求項における間違った記載を明確にする又は補正するものとする。
本条第二款に基づいても依然として特許権の保護範囲を確定できず、且つ当事者がともに特許無効審判を起こしていない場合、原告による訴訟請求を却下すると判決することができる。
17、請求項を解釈し、特許請求の範囲に記載された保護範囲を確定するときに、独立請求項がその従属請求項の限定する保護範囲と互いに相違すると推定することができる。独立請求項の要求した保護範囲がその従属請求項の保護範囲より大きく、前にある従属請求項の保護範囲は後にある従属請求項の保護範囲を大きい。しかし、当業者は特許明細書及び図面、特許審査履歴などの内部証拠を踏まえて異なる解釈ができることを除外する。
18、請求項における機能又は効果で表された機能的特徴について、明細書と図面に記載された当該機能又は効果の具体的な実施例及びその均等の実施例と合わせて、当該技術的特徴の内容を確定するものとする。
機能的特徴は、構成、組成、材料、ステップ、条件またはその間の関係について、その発明創造において果たしている機能または効果を限定する技術特徴を指す。以下は、一般に機能的特徴と認定すべきではない。
(1)機能又は効果的な言葉で記載されかつ当分野の普通の業者に広く知られた技術術語、または機能若しくは効果的表現で記載され且つ請求項の閲覧だけで上記機能または効果を実現できる具体的な実施形態を直接且つ明確に確定することができる技術特徴。
(2)機能的または効果的な言葉で表現されると同時に、相応な構成、組成、材料、ステップ、条件などの特徴で記載される技術特徴。
19、機能的限定の内容を確定するとき、機能的限定を明細書及び図面に対応する前記機能、効果を実現するために必須不可欠な構造、ステップ特徴に限定するものとする。
20、方法請求項でステップの順序を明確に限定した場合、ステップ自身とステップの間の順序は特許権の保護範囲に限定作用を有するものとする;方法請求項でステップの順序を明確に限定しない場合、これを理由に、ステップの順序の請求項への限定作用を考慮しないべきではなく、明細書と図面、請項に記載された全体的な技術案、各ステップ間のロジック関係及び特許審査履歴を合わせて、当分野の普通の業者の角度から、各ステップが特定の順序により実施するかどうかを確定するものとする。
21、製造方法で製品の技術特徴を確定することは特許権の保護範囲を確定するには限定の作用を有する。被疑侵害製品の製造方法は特許方法と同一でないし同等でもない場合、被疑侵害技術案が特許権の保護範囲に入っていないと見なされるべきである。
22、実用新案の請求項に非形状、非構造の技術的特徴を含んだ場合、該技術特徴は特許権の保護範囲を確定するには限定の作用を有する。
非形状、非構造の技術的特徴は、実用新案の請求項に記載された製品の形状、構造又はその組み合わせなどではない技術的特徴、例えば、用途、製造工芸、使用方法、材料の成分(組成成分、組成成分の比率)など、を指す。
23、製品発明又は実用新案の請求項に応用分野、用途が限定されていない場合、応用分野、用途は普通、特許権の保護範囲に限定作用を有しない。
24、請求項に記載された使用環境特徴は、特許権の保護範囲に限定作用を有する。被疑侵害技術案が請求項に記載された使用環境に適用できる場合、被疑侵害技術案が請求項に記載された使用環境特徴を具備すると見なすべきでり、被疑侵害技術案が該環境特徴を使用することを前提としない。然し、特許書類が該技術案が当該使用環境特徴にのみ適用できることを明確に限定するする場合、被疑侵害技術案が他の使用環境に適用できることを証明する証拠を有する場合、被疑侵害技術案が特許権の保護範囲に入っていない。
被疑侵害技術案が請求項における使用環境特徴に限定された使用環境に適用できない場合、被疑侵害技術案が特許権の保護範囲に入っていない。
使用環境特徴が主題名称と異なるとは、請求項において発明または実用新案を記載するために使用された背景もしくは条件且つ当該技術案に接続または配合の関係がある技術特徴を指す。
25、主題名称に含まれた応用分野、用途、または構成などの技術内容が請求項の保護請求する技術案に影響が生じる場合、該技術内容は特許権保護範囲に限定する作用がある。
主題名称は請求項に含まれたすべての技術特徴によって構成される技術案を抽象的に概括したものであり、特許技術案に対する簡単な命名であり、その代表した技術案は請求項のすべての技術特徴にて体現すべきである。
26、“から……なる”という表現方式を用いた請求項は閉鎖式請求項であり、一般に請求項に記載された構成部分または方法ステップ以外のものを含まないと解釈すべきである。
医薬、化学分野における成分に関わる閉鎖式請求項は成分ごとの各自の特性より協同に作用しており、他の物資がなくても特定の技術効果を生じることができるが、漢方薬の組み合わせものは除外である。
27、明細書における技術用語への解釈は当該技術用語の通常の意味と同一ではない場合、明細書の解釈を準ずるものとする。
被疑侵害行為の発生時に、技術用語が他の意味が生じた場合、特許出願日の時の意味で当該技術用語を解釈するものとする。
28、特許権者が特許文書において自定義語に関して、明細書における特定の意味で解釈すべきである。明細書には明確な定義がない場合、明細書における自定義語に関係する文脈を踏まえて理解すべきであり、最も発明の目的に合致する意味に解釈すべきである。特許権者が明細書において自定義語の意味を定義していなく、当業者が請求項、明細書の文脈を合わせても依然として明瞭に解釈できなくて、請求項の保護範囲を確定することができないことになる場合、原告による訴訟請求を却下することを判決することができる。
29、ひとつの特許書類において、通常、同一の術語は同一な意味を有すると解釈すべきである。異なる術語は異なる意味を有すると推定すべきである。しかし、明細書における記載または当業者の通常理解では異なる術語が同一な意味を有することを確定できるのを除外する。
30、明細書図面の役割は、当分野の普通の業者が直観的、あざやかに発明又は実用新案の各技術的特徴及び全体的技術案を理解できるように図形で明細書文字部分の記載を補足することである。当分野の普通の業者が請求項及び明細書を閲読してから、図面から直接に疑いなく確定できる技術内容のみが請求項の技術的特徴の意味への解釈に用いられる。
図面から推定される内容又は文字説明なし、図面から計測して得る寸法及びその関係は、関連技術的特徴の内容とするべきではない。
31、参照番号は技術案への理解に用いられることができ、請求項に参照番号を引用した場合、参照番号で反映された具体的な構造で請求項の技術的特徴を限定するべきではない。
32、特許請求項は一般的に明細書又は図面に開示された実施例を基に合理的概括してなるものであり、実施例は請求項の範囲内の技術案の例示に過ぎず、特許出願人が認定する発明又は実用新案を実現するための好ましい方式である。特許権の保護範囲は明細書に開示された具体的な実施例に制限されるべきではない。但し、以下のことは、この限りではない。
(1)請求項は実質的に実施例に記載された技術案である場合、
(2)請求項に機能的限定が含んだ場合。
33、要約の役割は技術情報を提供して、公衆の調査を便利にさせることで、特許権の保護範囲の確定に用いられないし、請求項の解釈に用いられない。
34、特許書類における印刷ミスが特許権の保護範囲の確定に影響を及ぼした場合、特許審査履歴により補正することができる。
請求の範囲、明細書及び図面における文法、文字、句読点、図形、符号などに明らかな間違い又は異義が存在しているが、請求の範囲、明細書及び図面を閲読することにより唯一の理解が得られた場合、該唯一の理解により認定すべきである。
二、発明、実用新案権の侵害判定
(一)技術的特徴の対比原則及び方法
35、オールエレメント原則。オールエレメント原則は1項の技術案が発明又は実用新案の特許権を侵害するかどうかを判定する基本的原則である。具体的な意味は、被疑侵害技術案は特許権の保護範囲に入るかどうかを判断するときに、権利者が主張した請求項に記載されたすべての技術的特徴を審査し、かつ請求項に記載されたすべての技術的特徴と被疑侵害技術案の対応するすべての技術的特徴と一つずつ対比することである。被疑侵害技術案には請求項に記載されたすべての技術的特徴と同一又は均等の技術的特徴を含むと、それが特許権の保護範囲に入ったと認定すべきである。
36、侵害判定を行うには、当事者より提供した特許製品と被疑侵害技術案と直接的に対比すべきではないが、特許製品が関係技術的特徴と技術案への理解に寄与する。
37、権利者、被疑侵害者とも特許権を持っている場合、普通、双方の特許製品又は双方の特許の請求項を直接的に対比すべきではない。
(二)同一的権利侵害
38、被疑侵害技術案には請求項で限定している1項の完全な技術案に記載されたすべての技術的特徴と同一の対応技術的特徴が含まれると、同一的権利侵害に属し、即ち、文字通りの意味上の権利侵害である。
39、請求項に記載された技術的特徴は上位概念を採用した場合、被疑侵害技術案における相応技術的特徴は相応する下位概念を採用したとき、同一技術的特徴になると認定すべきである。
40、被疑侵害技術案には請求項のすべての技術的特徴以外に、新しい技術的特徴が追加された場合、相変わらず特許権の保護範囲に入った。但し、特許書類には該技術的特徴が明確に排除された場合、この限りではない。
41、被疑侵害技術案には1項の閉鎖式請求項のすべての技術的特徴以外に、他の技術的特徴が追加された場合、被疑侵害技術案が該請求項の保護範囲に入らないと認定すべきである。但し、医薬、化学分野において組分に係る閉鎖式請求項については、該追加された技術的特徴は避けられない常軌数量の不純物である場合、この限りではない。
42、機能的限定が含んだ請求項について、本指南第19条に掲載している構造、ステップ特徴と比べて、被疑侵害技術案の相応の構造、ステップ特徴は同一の手段により同一の機能を達成し、同一の効果を奏し、また、差別があるが、基本的に同一の手段により同一の機能を達成し、同一の効果を奏し、かつ、当分野の普通の業者は特許出願日に創造性労働を払わずに想到できると、該相応の構造、ステップ特徴は上記機能的限定と同一であると認定すべきである。
上記構造、ステップ特徴が均等特徴になるかどうかを判断するには、それを1つの技術的特徴とすべきであり、2つ以上の技術的特徴に分けるべきではない。
43、後に特許権を獲得した発明又は実用新案は先行発明又は実用新案に対する改良であり、後の特許のある請求項に先行特許のある請求項に記載されたすべての技術的特徴が含まれて、かつ別の技術的特徴が追加された場合、後の特許は従属特許である。従属特許を実施するのは先行特許の保護範囲に入った。
以下は従属特許である。
(1)先行の製品請求項のすべての技術的特徴が含まれた以上、新しい技術的特徴が追加された;
(2)元の製品請求項の上に、元々発見しなかった新しい用途を発見した;
(3)元の方法請求項の上に、新しい技術的特徴が追加された。
(三)均等権利侵害
44、特許権侵害判定において、同一的権利侵害が成り立たない場合、均等権利侵害になるかどうかを判断するものとする
被疑侵害技術案は均等権利侵害になる場合、十分な証拠で支持しなければならず、権利者は挙証又は十分に説明すべきである。
45、均等権利侵害は、被疑侵害技術案には1つ又は1つ以上の技術的特徴が請求項における相応技術的特徴と文字から見て同一ではないが、均等特徴であり、被疑侵害技術案は特許権の保護範囲に入ったと認定するものとすることを指す。
均等特徴は請求項に記載の技術的特徴と基本的に同一の手段により基本的に同一の機能を実現し、基本的に同一の効果を奏し、かつ当分野の普通の業者が創造性労働を払わずに想到可能な技術的特徴を指す。
均等特徴になるかどうかを判断するときに、手段が技術的特徴自体の技術内容で、機能及び効果が技術的特徴の外部特徴で、技術的特徴の機能及び効果は該技術的特徴の手段によるものである。
46、基本的に同一の手段は、被疑侵害技術案における技術的特徴が請求項における技術的特徴と比べて実質的な差別がないことを指す。
47、基本的に同一の機能は、被疑侵害技術案における技術的特徴が請求項における相応技術的特徴とがそれぞれの技術案で発揮する役割は基本的に同じであることを指す。被疑侵害技術案における技術的特徴が請求項における相応技術的特徴と比べて他の役割がある場合、考慮しない。
48、基本的に同一の効果は、被疑侵害技術案における技術的特徴と請求項における相応技術的特徴とがそれぞれの技術案で達成する技術効果は基本的に同じであることを指す。被疑侵害技術案における技術的特徴が請求項における相応技術的特徴と比べて他の効果がある場合、考慮しない。
49、創造性労働を払わずに想到できるのは当分野の普通の業者にとって、被疑侵害技術案における技術的特徴と請求項における相応技術的特徴との相互取替えが容易に想到することを指す。具体的に判断する時に、両技術的特徴は同一の又は近似の技術類別に属するか、両技術的特徴は利用される作動原理が同じであるか、両技術的特徴間に簡単な直接取替え関係が存在するか、即ち、両技術的特徴を取り替える場合、他の部分を新たに設計するかなどの要素を考慮することができ、但し、寸法及びインターフェイスへの簡単な調整は新たな設計に該当しない。
50、均等権利侵害になるかどうかを判断するときに、手段、機能、効果及び創造性労働を払う必要があるかどうかについて順次により判断するが、手段、機能、効果への判断は主な役割を果す。
51、均等特徴の取替えは、具体的で、対応の技術的特徴の間の取替えであるべき、完全な技術案の間の取替えではない。
52、均等特徴は、請求項における若干技術的特徴が被疑侵害技術案における一つの技術的特徴と対応してもいいし、請求項における一つの技術的特徴が被疑侵害技術案における若干技術的特徴の組み合わせと対応してもいい。
53、均等特徴の取替えは、請求項における区別技術的特徴への取替えを含み、請求項における前提部分の技術的特徴への取替えをも含む。
54、被疑侵害技術案の技術的特徴は請求項における技術的特徴と均等であるかどうかを判断する時間点は、被疑侵害行為の発生時をけじめとするものとする。
55、請求項と被疑侵害技術案とは複数の均等特徴があった場合、当該複数の均等特徴の積重ねで被疑侵害技術案が請求項の技術発想と違う技術案になった又は被疑侵害技術案で予想できない技術的効果を取得した場合、普通は均等権利侵害になると認定しない。
56、機能的限定を含む請求項について、本指南第19条に記載の構造、ステップ特徴と比べて、被疑侵害技術案の相応構造、ステップ特徴は基本的に同一の手段により、同一の機能を実現し、同一の効果を奏し、かつ当分野の普通の業者は係争特許の出願日後から被疑侵害行為が発生した日まで、創造性労働を払わずに想到することができると、該相応構造、ステップ特徴は機能的限定と均等であると認定すべきである。
上記構造、ステップ特徴が均等特徴になるかどうかを判断するには、それを1つの技術的特徴とすべきであり、2つ以上の技術的特徴に分けるべきではない。
57、請求項に数値範囲特徴を採用する場合、権利者がそれと異なる数値特徴が均等特徴に該当すると主張した場合、一般的に支持しない。但し、該異なる数値特徴が出願日後に出ている技術内容である場合、この限りではない。
請求項には「少なくとも」、「超えない」などの用語で数値特徴を限定し、当分野の普通の業者が請求の範囲、明細書及図面を閲読してから、特許技術案において該用語で技術的特徴に対し厳しく限定することを特別に強調したと考えると、権利者がそれとは異なる数値特徴が均等特徴に該当すると主張した場合、支持しない。
実用新案の請求項に数値特徴を有し、権利者が被疑侵害技術案の相応数値特徴が均等特徴に該当すると主張した場合、支持にない。但し、該異なる数値特徴が出願日後に出ている技術内容である場合、この限りではない。
58、明細書又は図面だけに記載されたが、請求項にまとめていない技術案について、特許権者は当該技術案をあきらめたと見なされるものとする。特許権者は特許権の保護範囲に当該技術案が含まれたと主張した場合、支持しない。
59、被疑侵害技術案は明細書に明確に排除された技術案又は背景技術欄に記載の技術案であり、権利者は均等権利侵害になると主張した場合、支持しない。
60、発明請求項に記載の発明点でない技術的特徴、補正してなる技術的特徴又は実用新案の請求項に記載の技術的特徴については、特許権者が特許出願又は補正のときに、取替え可能な技術的特徴が存在するのを知りながら又は十分に予想することができるが、それを特許権の保護範囲に収めないと、侵害判定において、権利者は均等特徴なるとの理由で該取替え可能な技術案を特許権の保護範囲に納めると主張した場合、支持しない。
61、被疑侵害技術案における技術的特徴は請求項における技術的特徴と均等であるかどうかを判断する場合、被疑侵害者は特許権者が均等特徴をすでにあきらめて、禁反言すべきであることを理由に抗弁することができる。
禁反言は、特許権登録又は無効審判において、特許出願人又は特許権者が請求項、明細書への範囲を縮小する補正又は意見陳述の方式により、保護範囲を放棄したので、特許権侵害訴訟において、均等権利侵害になるかどうかを判断する場合、特許権者がすでに放棄した内容を改めて特許権の保護範囲に入れることを禁止することを指す。
62、特許出願人又は特許権者は、保護範囲を制限又は部分放棄したのは、新規性又は進歩性に乏しい、必須技術的特徴に乏しい、請求項が明細書に支持されない、明細書の開示が不十分であるなどの登録を取得できない実質的な欠陥を克服する需要に基づくべきである。
権利者は、特許出願人又は特許権者による特許書類への補正の理由を説明できない場合、その補正は登録を取得できない実質的な欠陥を克服するためであると推定できる。
63、特許出願人又は特許権者による請求項の保護範囲への範囲を縮小する補正又は陳述は、明示的で、かつ書面による陳述、特許審査履歴、発効した法的書類に記載されたものでなければならない。
権利者は特許出願人、特許権者が権利確認手続きにおいて請求の範囲、明細書及図面への範囲を縮小する補正又は陳述が明確に否定されたのを証明できる場合、該補正及び陳述は技術案の諦めを招かないと認定すべきである。
64、禁反言の適用は被疑侵害者の請求を前提とし、かつ被疑侵害者により特許出願人又は特許権者の反言の相応証拠を提出される。
特許出願人又は特許権者の反言が記載された証拠を取得した場合、すでに調査して明らかになった事実により、禁反言を適用して請求項に必要な制限を行い、合理的に特許権の保護範囲を確定することができる。
三、意匠権保護範囲の確定
65、意匠権侵害紛争事件を審理するには、まず意匠権の保護範囲を確定するものとする。意匠権の保護範囲は図面又は写真に表された意匠製品の意匠を準じ、意匠の簡単な説明とその設計要点、意匠権者の無効審判と訴訟における意見陳述などは、意匠権の保護範囲への理解に用いることができる。
当事者が訴訟中に提供した意匠製品の実物は意匠への理解の参考になるが、意匠権の保護範囲を確定する依拠にならない。
66、全体的対比原則。意匠権の保護範囲を確定する時に、授権公告における該意匠を示す図面又は写真に表された形状、図案、色などのすべての設計要素からなる完全な設計内容を統括に考慮すべきであり、図面又は写真の各図に表されたすべての設計的特徴を考慮しなければならず、設計的特徴の一部のみを考慮し、他の設計的特徴を無視するべきではない。
設計的特徴は、相対的に独立した視覚効果を有し、完全性及び可識別性を有する製品の形状、図案及びその組み合わせ、並びに色と形状、と図案との組み合せ、すなわち、製品の一部の設計を指す。
67、特許権人は、書面による資料を提出して意匠の設計要点を説明し、意匠の独創部分とその設計の内容を説明することができる。簡単な説明欄に設計要点が記載されている場合、参考に用いられることができる。
設計要点は、意匠が従来の設計と区別し、普通の消費者に顕著な視覚影響を及ぼす設計的特徴を指す。
68、意匠権で色彩を保護請求した場合、保護請求した色彩を意匠権の保護範囲を確定する要素のひとつとするものとし、即ち、侵害判定において、それに含んだ形状、図案、色彩及びそれらの組み合わせと被疑侵害製品の相応の形状、図案、色彩及びそれらの組み合わせと総合的に対比するものとする。
69、意匠権で色彩を保護請求した場合、権利者は国務院特許行政部門に発行した又は認可した関係証拠を提出するものとし、意匠権の保護範囲の確定に用いる。必要に応じて、国務院特許行政部門の特許審査履歴における色彩を調べるものとする。
70、全体的な視覚効果に影響を及ぼさない製品の大きさ、材料、内部構造を、意匠権の保護範囲から外れるものとする。
71、類似意匠権の保護範囲は各独立な意匠でそれぞれ確定するものとする。基本設計と他の各類似設計ともそれぞれの意匠権の保護範囲を確定する根拠とすることができる。
72、セット製品の全体意匠と当該セット製品を組合わせた1つずつの意匠とも当該意匠書類の図面又は写真に示された場合、その保護範囲は当該セット製品を組合わせた1つずつの意匠で確定する。
73、グラフィカルユーザインタフェースについての意匠の保護範囲は、設計要点を結び付けて製品の意匠設計ビューにより確定されるべきである。
動的なグラフィカルユーザインタフェースについての意匠の保護範囲は、簡単な説明における動的変更過程に対する記述を結び付けて、動的変更過程を確定できる製品の意匠設計ビューに基づいて、共通に確定されるものとする。
四、意匠権の侵害判定
74、意匠製品と同一又は近似種類の製品において、登録意匠と同一又は近似する意匠を採用したものは、被疑侵害意匠は意匠権の保護範囲に入ったと認定るものとする。
75、意匠権侵害判定を行うには、登録公告に示された当該意匠の図面又は写真を以って対比するものとし、意匠権者が提出した意匠製品の実物を以って対比すべきではない。但し、当該意匠製品と意匠公告書類に示された図面又は写真の意匠製品と全く一致し、かつ各当事者とも異議がない場合、この限りではない。
76、意匠権侵害判定を行うには、一般消費者の視覚で直接的に観察して対比するものとし、拡大鏡、顕微鏡などのほかの道具により対比すべきではない。但し、図面又は写真に示された製品の意匠が出願時に拡大されたものであれば、侵害対比の時にも被疑侵害製品を相応に拡大して対比するものとする。77、意匠権侵害判定を行うには、まず被疑侵害製品と意匠製品とは同一又は類似種類の製品であるかどうかを審査するものとする。
グラフィカルユーザインタフェースについての意匠の種類を確定するには、該グラフィカルユーザインタフェースを使用する製品を基準とするべきである。
78、意匠製品の機能、用途、使用環境により、製品の種類が同一又は類似であるかどうかを判断するものとする。
製品の用途を確定するとき、以下の順序により関係要因を総合に参考して確定することができる。意匠の簡単な説明、国際意匠分類表、製品の機能と製品の販売、実際使用の状況などの要素。
意匠製品と被疑侵害意匠製品の機能、用途、使用環境とは共同性がない場合、意匠製品と被疑侵害製品とは同一又は類似種類の製品ではない。
79、意匠権を侵害するかどうかを判断するには、同一又は類似であるかどうかを基準とするものとし、商標法の意味での混同、誤認になるかどうかを基準とすべきではない。
80、意匠が同一又は類似であるかどうかを判断するには、設計特徴を全般に観察し、全体的な視覚効果を総合に判断するのを原則とし、即ち、登録意匠、被疑侵害設計の視覚できる部分のすべての設計特徴に対して一つずつ分析して対比した後に、製品の意匠の全体的視覚効果を影響できるすべての要素を総合に考慮して判断するものとする。
以下は普通意匠の全体的視覚効果にもっと影響を及ぼす。
(1)製品の他の部分に対する正常使用時に容易に直接観察できる部分;
(2)意匠の他の設計特徴に対する意匠の設計要点。
対比する時に、意匠と被疑侵害製品の設計特徴との相違点について客観的に、全般に総括し、各相違点が全体的視覚効果に与える影響の重要度を一つずつ判断し、最終に全体観察、総合判断により認定するものとする。
81、意匠が同一又は類似であるかどうかを判断するには、一般消費者の知識レベルと認知能力を持つ判断主体の全体的視覚効果を標準とするものとし、該意匠製品の一般的なデザイナー又は製品の実際購入者の観察能力を標準とすべきではない。
82、一般消費者は、仮設の「人」であり、知識レベルと認知能力の両面により確定するものとし、確定する時には、意匠特許出願日の時に登録意匠と同一又は近似する種類の意匠のデザインスペースを考慮すべきである。
一般消費者の知識レベルと認知能力は、既存の設計の状況に依頼するものである。当事者は、既存の設計の状況を依拠とし、一般消費者の知識レベルと認知能力を主張すべきである。
83、意匠が同一又は類似であるかどうかを判断するには、当事者に対して、関連設計特徴のデザインスペース及び既存の設計の状況を証明する証拠を提出するように要求することができる。
デザインスペースは、デザイナーが特定の製品の意匠時を創作する時の自由度を指す。デザインスペースは、下記の条件により制限されるものである。即ち、
(1)製品またはその中の部品の技術的機能;
(2)このような製品の通常の特徴を使用する必要性;
(3)既存の設計の混雑度;
(4)他の設計がデザインスペースに与える影響の要因、例えば経済的要因(コスト削減)等。
ある設計特徴が対応する既存の設計が多いほど、該特徴のデザインスペースに対する占拠が著しくなり、そのデザインスペースが小さくなり、代替設計案が少なくなり、微妙な違いが全体的な視覚効果に大きい影響を与えることになる。逆に、既存の設計が少ないほど、該特徴のデザインスペースに対する占拠が僅かになり、そのデザインスペースが大きくなり、代替設計案が多くなり、微妙な違いが全体的な視覚効果に明らかな影響を与えることはない。
既存の設計の状況は、意匠特許の出願日前にすでに国内外の公衆に知られた種類が同一又は類似する製品の意匠の全体的状況、及び各設計特徴の具体的な状況を指す。既存の設計が設計特徴と同一又は基本的に同一の設計特徴を具備することを証明できる証拠がある場合、該設計特徴が製品の全体的な視覚効果に与える影響が比較的に小さい。
84、被疑侵害設計と登録意匠とは全体的な視覚効果に差異がない場合、両者が同一できると認定するものとし、全体的な視覚効果に実質的な差異がない場合、両者が類似できると認定するものとする。具体的言えば、
(1)両者の形状、図案、色彩など全体的な視覚効果に差異がない場合、両者が同一であると認定するものとする;
(2)両者の形状、図案、色彩など全体的な視覚効果が完全に同一であるのではないが、明確な差異がない場合、両者が類似であると認定するものとする;
(3)両者の形状、図案、色彩など全体的な視覚効果が同一ではなく、かつ明確な差異がある場合、両者が同一ではなく、類似でもないと認定するものとする。
85、同一又は類似を判断するとき、製品の機能に決められた設計特徴を考慮に入れない。
製品の機能に決められた設計特徴は、機能により有限的に又は唯一的に確定され、審美的な要因を考慮せずに形成される設計特徴を指す。技術規格により規定される、又は機械的な嵌め合い関係を実現するために必ず採用される選択不可能な設計特徴は、機能的な設計特徴である。
86、静的なグラフィカルユーザインタフェースの設計について、製品のグラフィカルユーザインタフェース部分を主に考慮し、該部分と製品の他の部分との関係、例えば位置、割合、分布関係を同時に考慮し、被疑侵害設計における対応する内容と総合的に判断すべきである。被疑侵害製品のグラフィカルユーザインタフェースの意匠が特許設計と同一又は類似し、且つ製品の他の部分との関係が全体的な視覚効果に対して著しい影響を与えないものは、被疑侵害設計が特許権の保護範囲に入ると認定すべきでる。
被疑侵害設計が静的なグラフィカルユーザインタフェースの意匠を完全に含むものは、被疑侵害設計が特許権の保護範囲に入ると認定すべきでる。
87、動的なグラフィカルユーザインタフェースの設計について、被疑侵害設計と動的なグラフィカルユーザインタフェースの意匠それぞれのビューがいずれも同一又は類似であるものは、被疑侵害設計が特許権の保護範囲に入ると認定すべきでる。具体的に判断する場合、グラフィカルユーザインタフェースの部分と製品の他の部分との位置、割合、分布の関係も考慮すべきである。
被疑侵害設計は一部の状態のビューが欠如していることによって特許設計と一致した変化過程を表現できない場合は、被疑侵害設計が特許権の保護範囲に落ちないと認定すべきでるが、特許設計と一致した変化過程をまだ唯一に確定できる場合は、この限りではない。
被疑侵害設計が一部の動的なグラフィカルユーザインタフェースの意匠またはキーフレームを使用した場合、その一部またはキーフレームがグラフィカルユーザインタフェースの意匠の設計要点に属すれば、被疑侵害設計が特許権の保護範囲に入る。但し、被疑侵害設計の全体的な視覚効果と動的なグラフィカルユーザインタフェースの意匠とが同一又は類似でない場合は、この限りではない。
88、立体製品の意匠について、普通、形状が全体的な視覚効果にもっと影響を及ぼし、同一又は類似を判断するとき、形状に重点を置くものとする。但し、その形状が慣用設計である場合、図案、色彩が全体的な視覚効果にもっと影響を及ぼす。
グラフィカルユーザインタフェースでない設計特徴が通常の設計である場合、グラフィカルユーザインタフェースが全体的な視覚効果に対して著しい影響をさらに与える。
慣用設計は、従来設計における一般消費者に熟知され、製品の名称だけで想到である相応設計を指す。意匠製品の分野では、互いに独立した各製品メーカーがともに採用する設計特徴は、一般的に通常の設計に属する。通常の設計が意匠特許の全体的な視覚効果に対して一般的に著しい影響を与えないが、通常の設計の組み合わせがユニークな視覚効果をもたらすことができる場合は、この限りではない。
89、平面製品の意匠について、普通、図案、色彩が全体的な視覚効果にもっと影響を及ぼし、同一又は類似を判断するとき、図案、色彩に重点を置くものとする。
90、色彩を保護請求する意匠について、まず、当該意匠が慣用設計であるかどうか確定するものとし、慣用設計である場合、その図面、色彩のみを判断するものとし、形状、図案、色彩とも新しい設計である場合、形状、図案、色彩三者の組み合わせを判断するものとする。
91、不透明材料を透明材料に取替え、又は透明材料を不透明材料に取替え、かつ材料の特徴の取替えだけで、製品の意匠が明確に変わらない場合、意匠の同一又は類似を判断するとき、考慮に入れるべきではない。但し、透明材料で当該製品の意匠の美観を変化しさせ、一般消費者の当該製品への全体的な視覚効果が変わった場合、考慮に入れるものとする。
被疑侵害製品について不透明材料を透明材料に取替え、透明材料を通じて製品の内部の形状、図案、色彩を観察できる場合、内部構造が当該製品の意匠の一部と見なすものとする。
92、状態が変化する製品の意匠について、その各種の変化状態をいずれも保護範囲に含ませるべきであり、被疑侵害設計と状態変化の図に示す各種の使用状態の意匠とが何れも同一または類似である場合は、被疑侵害設計が意匠権の保護範囲に入ると認定すべきでる。被疑侵害設計は一部の使用状態の意匠が欠如している或いはそれと同一または類似でない場合は、被疑侵害設計が意匠権の保護範囲に入っていないと認定すべきでる。
参照図は、普通、意匠を使用する製品の用途、使用方法又は使用場所などを表明するためのものであり、状態が変化する製品の意匠の保護範囲の確定に用いられることができない。
93、係る意匠は類似意匠又はセット製品の意匠などの複数の独立した意匠を含む意匠である時に、権利者は、その主張する意匠を明らかに確定すべきである。複数の意匠を権利基礎として主張する時に、被疑侵害製品の関連設計内容をその主張する各意匠のそれぞれと個別に対比すべきである。
被疑侵害設計が類似意匠又はセット製品のうちの一つの意匠と同一または類似である場合は、被疑侵害設計が特許権の保護範囲に入ると認定すべきでる。
94、組立関係が唯一であるコンポーネント製品の意匠特許について、被疑侵害設計が該コンポーネント製品の組み合わせた状態での全体的な意匠と同一または類似である場合は、被疑侵害設計が特許権の保護範囲に入ると認定すべきでる。
各コンポーネントの間に組立関係がない、或いは組立関係が唯一でないコンポーネント製品の意匠について、被疑侵害設計がその単一コンポーネントの全ての意匠と同一または類似である場合は、被疑侵害設計が意匠権の保護範囲に入ると認定すべきでる;被疑侵害設計は一部の単一コンポーネントの意匠が欠如している或いはそれと同一または類似でない場合は、被疑侵害設計が特許権の保護範囲に入っていないと認定すべきでる。但し、その一部の単一コンポーネントの意匠が全ての単一コンポーネントの意匠の全体的な視覚効果に対して著しい影響を与えない場合は、この限りではない。
95、意匠権者、被疑侵害者の意匠出願ともすでに登録され、かつ意匠権者の意匠出願日が被疑侵害者の意匠出願日より早く、被疑侵害者の意匠と意匠権者の意匠と同一又は類似である場合、被疑侵害者がその意匠を実施した行為は、先行の意匠権を侵害したと認定することができる。
96、最終審決を行う前に、意匠権者が主張した意匠は、特許復審委員会により無効と宣告された場合、本指南第9、10条を参照して処理することができる。
五、特許侵害行為の認定
(一)直接的な特許侵害行為の認定
97、発明と実用新案が登録後、特許法に別途定めがない限り、如何なる単位又は個人が特許権者の許可を得ずに、その特許を実施してはいけない。即ち、生産経営を目的として、その特許製品を製造、使用、許諾販売、販売、輸入し、又はその特許方法を利用し或いは当該特許方法により直接的に得られた製品を使用、許諾販売、販売、輸入してはいけない。
意匠が登録後、如何なる単位又は個人が意匠権者の許可を得ずに、その意匠を実施してはいけない。即ち、生産経営を目的として、意匠製品を製造、販売、輸入してはいけない。
98、発明特許の公開日と実用新案、意匠の登録公告日の前における実施行為は、特許権侵害行為とはならない。
発明特許の公開日から登録公開日までの間に、即ち、発明特許権の臨時保護期間内には、当該発明を実施した単位又は個人は、権利者に適当な使用料を支払うものとする。その実施行為の判定について、特許侵害の関係法的規定を参照することができる。
特許出願の公表の時における出願人が求めた保護範囲は特許登録公告における特許権の保護範囲とは一致しておらず、被疑侵害技術案は上記二つの保護範囲の両方ともに入った場合、被疑侵害者が臨時保護期間内に当該発明を実施したと認定するものとする。被疑侵害技術案はその内の1つの保護範囲のみに入った場合、被疑侵害者が臨時保護期間内に当該発明を実施していないと認定するものとする。
99、発明又は実用新案製品の製造とは、請求項に記載された製品の技術案が実現されたことを指し、製品の数、品質は製造行為への認定に影響を及ぼさない。
以下は発明又は実用新案製品の製造行為と認定するものとする。
(1)異なる製造方法で製品を製造した行為、但し、方法で限定された製品請求項はこの限りではない;
(2)部品を特許製品に組み立てた行為。
100、意匠製品の製造とは、意匠権者が国務院特許行政部門に出願した時に提出した図面又は写真における当該意匠製品が実現されたことを指す。
101、発明又は実用新案製品の使用とは、請求項に記載された製品技術案の技術機能が適用されたこと、又はその効果が実現されたことを指す。
102、発明又は実用新案権を侵害した製品を部品又は中間製品として、別の製品を製造したことは、特許製品の使用と認定するものとする。
103、特許方法の使用は、請求項に記載された特許方法技術案の各ステップが実現されたことを指し、当該方法を使用した結果は特許権侵害になるかどうかに関する認定に影響を及ぼさない。
104、意匠製品の使用は、当該意匠製品の機能、技術性能が応用されたことを指す。
105、特許権を侵害した製品の売買契約が法によって成立した場合、特許権侵害製品の販売を構成したと認定することができ、当該製品の所有権が実際に遷移した否かは、一般に販売が成立するか否かの認定に影響を及ぼさない。
抱き合わせ販売又は他の方式で特許権を侵害した製品の所有権を譲渡して、形を変えて商業利益を獲得した場合も、当該製品の販売である。
生産営業を目的として、他人の特許権を侵害した製品を寄贈したものも同上である。
106、発明又は実用新案権を侵害している製品を以って部品又は中間製品として、別の製品を製造して、当該別の製品を販売した場合、特許製品の販売であると認定するものとする。
但し、当該中間製品が製造工程に物理的、化学的性能が実質的な変化を発生した場合は除外である。
意匠権を侵害している製品を部品として、別の製品を製造して販売した場合、意匠製品の販売であると認定するものとするが、意匠権を侵害している製品が当該別の製品において技術的機能のみを有する場合は、この限りではない。
技術的機能のみを有するとは、当該部品が最終製品の内部構成になり、最終製品の正常使用中に視覚効果が生じず、技術的作用と効果のみを有することを指す。
107、他人の特許権を侵害している製品を販売した行為が実際に発生する前に、被疑侵害者が他人の特許製品を販売する意思表示を行った場合、許諾販売になる。
広告や、店のショーウィンドに陳列、インタネット又は展示会で展示などの方式にて他人の特許製品を販売する意思表示をした場合、許諾販売と認定することができる。
108、他人の特許権を侵害している製品を貸出した場合、特許製品の販売と認定するものとする。
109、特許製品の輸入は、製品特許の権利保護範囲に入った製品、または特許方法により直接的に得られた製品又は意匠権を含んだ製品を空間上に域外から境界線を越えて域内に運送した行為を指す。
110、方法特許が製品まで及ぶとは、方法発明特許が登録後、如何なる単位又は個人は特許権者の許可を得ずに、生産経営を目的として、当該特許方法を使用してはいけない上、生産経営を目的として、当該方法により直接的に得られた製品についても使用、許諾販売、販売、輸入してはいけない。
111、特許方法により直接的に得られた製品とは、原材料、物品を方法請求項に記載されたすべてのステップにより処理加工して、原材料、物品を構造上又は物理化学の性能上に実質的な変化が生じて得られた原始製品を指す。
前記原始製品を更に加工、処理して得られた後続製品、即ち、当該原始製品を中間部品又は原材料として、これを加工、処理して得られた他の後続製品は、当該特許方法により直接的に得られた製品の使用と認定するものとする。当該後続製品に対する更なる加工、処理は、当該特許方法により直接的に得られた製品の使用行為とはならない。
112、特許法第61条に規定された「新製品」とは、国内外で初めて生産された製品を指し、当該製品は特許出願日前にすでにあった同種類の製品と比べて、製品の組成成分、構造又は品質、性能、機能について明確な区別がある。
製品又は製品の製造技術案は特許出願日前にすでに国内外の公衆に知られた場合、当該製品が特許法に規定された新製品ではないと認定するものとする。
新製品であるかどうかは、権利者により挙証して証明するものとする。権利者が証拠を提出して当該製品が特許法に規定された新製品であると初歩的に証明した場合、立証責任を果たしたと見なす。
113、特許法第61条に規定された同一製品とは、被疑侵害製品と新製品の製造方法を実施して直接的に得られた原始製品の形状、構造又は成分などと実質的な差異がないことを指す。
同一製品であるかどうかは、権利者により挙証して証明するものとする。
114、用途発明特許について、権利者が被疑侵害者が被疑侵害製品を製造、使用、販売、許諾販売、輸入したのは当該特許の特定の用途として用いたと証明するものとする。
115、科学研究、実験の過程で、特許権利者の許可を得ずに、特許製品の製造、使用、輸入し、或いは、特許方法を利用して工具、手段等として、他の技術の研究実験を行い、或いは、特許技術案のビジネス上の将来性等を研究し、その結果が特許技術と直接な関係がない場合、特許権侵害の行為になる。
(二)共同侵害行為
116、二人又は二人以上が共謀で特許権侵害の行為を実施し、又は分業、協力して実施した場合、共同権利侵害になる。
117、委託人は他人の実施した行為が特許法第11条に規定された特許権侵害の行為になったことを明知しているのに、他人に委託して製造し、又は製品に「監製」を表記する等参与に類似した行為がある場合、委託人と受託人は共同侵害になる。
118、他人の実施行為が特許法第11条に規定された特許権侵害の行為になったことを明知しているのに、教唆、幇助した場合、教唆人又は幇助人は実施者と共同侵害人であり、連帯責任を負うべきである。
119、行為者は、係る製品が専ら係争特許技術案を実施するための原材料、中間製品、部品又は機器等の専用製品であることを明知しているのに、権利人の許可を得ずに、生産営業を目的として、当該専用製品を他人に提供し、かつ他人が権利侵害行為を実施した場合、行為者の当該専用製品提供行為は、本指南第118条に規定された他人に権利侵害の実施を幇助する行為になる。但し、当該他人は本指南第130条又は特許法第69条第(3)、(4)、(5)項に規定された状況に属する場合、当該行為者にて民事責任を負う。
前項における「専用」製品とは、原料、製品等が係争特許が保護を求めた技術案の実現に対して実質的な意義を有し、かつ「実質的非権利侵害用途」を有するか否かを判断標準とするものである。即ち、関係原料、製品等が、係争特許の技術案の実現に必要不可欠で、かつ係争特許で保護する技術案に用いられるしか、その他「実質的非権利侵害用途」がない場合、一般に当該原料又は製品等は「専用」であると認定するものとする。
製品が「専用」であるか否かは、権利人により挙証して証明するべきである。
120、行為者が他人の特許権を侵害する行為を実施することを明知しているのに、当該実施行為に場所、保存、運送などの便利条件を提供した場合、本指南第118条に規定された他人の特許権侵害の実施を幇助する行為になる。
121、権利人の許可を得ずに、行為者が図面、製品の取り扱い説明書の提供、技術案の伝授、製品のプレゼンテーション等の方式で、生産経営を目的として、特定の技術案を実施するよう他人を積極的に誘導し、そして、他人が実際に権利侵害行為を実施した場合、行為者の誘導行為は、本指南第118条に指摘された特許権利侵害の実施に他人を教唆する行為になる。
122、技術譲渡契約の譲受人が契約の約定に基づいて技術を譲受し実施することで、他人の特許権を侵害した場合、譲受人にて侵害責任を負う。
但し、譲渡人は係る技術が他人の特許権を侵害したことを明知しているのに、これを譲渡した場合、譲渡人の譲渡行為は、本指南第118条に指摘された特許権利侵害の実施に他人を教唆する行為になると認定することができる。
六、特許権侵害抗弁
123、被疑侵害者の抗弁理由は、一般に一審弁論が終結する前に提出して、相応証拠を提供するものとする。
被疑侵害者は、二審期間で抗弁理由を変更し、或いは新しい抗弁理由を提出し、かつ二審裁判所に採用され、これによって権利侵害しないと認定された場合でも、訴訟費用及び相手側の弁護士費用、出張費用など関係費用を負担するものとする。
(一)特許権効力の抗弁
124、被疑侵害者は、証拠を以って係争特許権が未発効、失効、法に基づいて無効とされたことを証明した場合、原告の起訴を却下すると裁定することができる。
125、特許権侵害訴訟において、被疑侵害者が特許権が特許の登録条件に合致せず、無効すべきでだと抗弁した場合、その無効審判は特許復審委員会の方に提出するものとする。
(二)特許権濫用の抗弁
126、被疑侵害者は証拠を以って、係争特許が特許権者が悪意に取得したことを証明した場合、原告の訴訟請求を棄却すると判決することができる。
特許権侵害訴訟中に特許権が無効にされた場合でも、特許権濫用と簡単に認定すべきではない。
127、悪意に特許権を取得したこととは、特許権の保護が取得すべきではないと明知しており、その発明創造を特許出願して特許権を取得した行為を指す。以下の情況を含む。
(1)出願日前に、特許権者が明確に知っている国家基準、業界基準など技術基準における技術案を出願して特許権を取得した場合、
(2)国家基準、業界基準など技術基準の制定参加者が、上記基準の起草、制定等の過程で明確に知った他人の技術案を出願して特許権を取得した場合、
(3)ある地域に広く製造又は使用された製品であると明知しているのに、これを出願して特許権を取得した場合、
(4)実験データをでっち上げ、技術効果を偽りする等手段を取って、係争特許に特許法の授権条件を満足させて特許権を取得した場合、
(5)域外に既に公開された特許出願書類に披露された技術案を中国で出願して特許権を取得した場合。
(三)非侵害抗弁
128、被疑侵害技術案の技術的特徴は請求項に記載されたすべての技術的特徴と比べて、請求項に記載された1つ又は1つ以上の技術的特徴が欠如した場合、特許権侵害にならない。
129、被疑侵害技術案の技術的特徴は請求項に記載された対応技術的特徴と比べて、1つ又は1つ以上の技術的特徴が同一でも均等でもない場合、特許権侵害にならない。
下記の情況は同一でも均等でもないと認定することができる。
(1)当該技術的特徴のため被疑侵害技術案が新しい技術案になった場合、
(2)当該技術的特徴が機能、効果において請求項における対応技術的特徴より明確に優れて、かつ当業者がこの変化が実質的な改良を有し、自明ではないと認めた場合。
(3)被疑侵害技術案には、請求項における個別技術特徴を省略し又は簡単或いは低レベルの技術特徴で請求項における相応技術特徴を入れ替え、請求項における、当該技術特徴と対応する性能と効果を捨て又は著しく低下させ、劣化した技術案になった場合。
130、個人的な使用などの非生産経営の目的で他人の特許を実施したことは、特許権侵害とならない。
(四)権利侵害とみなさない抗弁
131、特許製品又は特許方法により直接的に得られた製品は、特許権者又は特許権者に許可された単位、個人により販売した後、当該製品を使用、許諾販売、販売、輸入した場合、特許権侵害と見なされない。以下のことを含む。
(1)特許権者又はその許可されたものが中国国内でその特許製品又は特許方法により直接的に得られた製品を販売した後、購買者が中国国内において当該製品を使用、許諾販売、販売した場合、
(2)特許権者又はその許可されたものが国外でその特許製品又は特許方法により直接的に得られた製品を販売した後、購買者が当該製品を中国国内に輸入した場合、及びその後に当該製品を使用、許諾販売、販売した場合、
(3)特許権者又はその許可されたものがその特許製品の専用部品を販売した後、当該部品を販売し又はこれを特許製品に組み合わせる場合、
(4)方法特許の特許権者又はその許可された人がその特許方法を実施するための専用設備を販売した後、当該設備を使用して当該方法特許を実施した場合。
132、特許の出願日前にすでに同一製品を製造している、同一方法を使用している、又は製造、使用の必要な準備ができて、かつ元の範囲内に継続して製造、使用した場合、特許権侵害と見なされない。
前記状況で製造された特許製品又は特許方法により直接的に得られた製品を使用、許諾販売、販売した場合、特許権侵害と見なされない。
133、先使用権主張の要件:
(1)製造、使用の必要な準備ができた。即ち、発明創造の実施に必須な主な技術図面又は工程書類がすでに完成し、又は発明創造の実施に必須な主な設備又は原材料が既に製造され又は購買された。
(2)元の範囲内に製造、使用を継続した。「元の範囲」は、特許出願日前にすでにできた生産規模と現有生産設備又は現在の生産準備を以って達成できる生産規模を含む。元の範囲を超えた製造、使用行為は、特許権侵害になる。
(3)先行製造した製品又は先行使用した方法又は意匠は、先使用権者が自ら独立で完成した又は合法的な手段で特許権者又は他の独立研究完成者から取得したものであるべきで、出願日前に剽窃、窃盗又は他の不正手段で獲得したものであるべきではない。被疑侵害者が非法的に獲得した技術又は意匠を以って先使用権の抗弁を主張した場合、これを支持しない。
(4) 所属企業と一緒に譲渡する以外、先使用権者が自分の先行に実施した技術を譲渡してはならない。即ち、先使用権者が特許出願日の後にそのすでに実施した又は実施の準備ができた技術又は意匠を他人に譲渡し又は許諾して実施させ、被疑侵害者が当該実施行為が元の範囲内における継続実施であると主張した場合、これを支持しない。但し、当該技術又は意匠は元の企業と一緒に譲渡又は相続した場合、この限りではない。
134、中国の領土、領水、領空に通過した外国の輸送機器は、その所属国と中国と締結した協議、又は共同に参加した国際条約、或いは互恵原則に従い、輸送機器自身の需要のためその装置又は設備に関係特許を使用した場合、特許権侵害と見なされない。
但し、臨時通過は交通輸送機器で特許製品の「転送」、即ち、1つの交通輸送機器から別の交通輸送機器に移送した行為、を含まない。
135、専ら科学研究と実験のために関係特許を使用した場合、特許権侵害と見なされない。
専ら科学研究と実験のためとは、専ら特許技術案自身に対し行った科学研究と実験を指す。その目的は、他人の特許技術を研究、検証、改良することで、すでにあった特許技術の基に新しい技術成果を生み出すことである。
本条第1項における関係特許を使用した行為は、当該研究実験者が自ずから関係特許製品を製造、使用、輸入し又は特許方法を使用した行為を含み、他人が当該研究実験者のために関係特許製品を製造、輸入した行為をも含む。
136、行政審査批准に必要な情報を提供するために、特許薬品又は特許医療機器を製造、使用することと、専ら該者に特許薬品又は特許医療機器を製造、輸入することは、特許権侵害と見なされない。
行政審査批准に必要な情報とは、『中華人民共和国薬品管理法』、『中華人民共和国薬品管理法実施条例』及び『薬品登録管理弁法』など薬品管理に係る法律法規、部門規章などに規定された実験資料、研究報告、科学文献などの関係情報を指す。
137、従来技術の抗弁は、特許権の保護範囲に入ったと訴えられたすべての技術的特徴が、一つの従来技術案における相応技術的特徴と同一又は均等であり、又は当業者が被疑侵害技術案は1つの従来技術と当分野の公知常識との簡単な組み合わせであると認めた場合、被疑侵害者が実施した技術は従来技術であり、被疑侵害者の行為は特許権侵害にならないと認定するものとする。
138、従来技術とは、特許出願日前に国内外に公衆に知られた技術を指す。従来技術の範囲は、公知領域に入り公衆が自由に使用できる技術だけでなく、他人の特許権の保護範囲内にある非公知技術、ひいては特許権者の保有する他の先行特許技術も含む。ただし、特許法第二十四条に規定された、新規性喪失の猶予期間にある技術は、従来技術と引用して抗弁してはならない。
139、従来意匠の抗弁は、被疑侵害製品の意匠と1つの従来技術と同一又は類似し、或いは被疑侵害製品の意匠が1つの従来意匠と当該製品の慣用意匠との簡単な組み合わせである場合、被疑侵害製品の意匠は従来意匠であり、被疑侵害者の行為が意匠権侵害にならない。
140、従来意匠は、出願日前に国内外に公衆に知られた意匠を指す。国内外において出版物で、または使用などにより公開した意匠を含む。
141、2008年改正特許法が実施した前の特許法の規定に基づいて出願し権利化されたものについて、その従来技術または従来意匠は改正前の特許法の規定に従う。
142、抵触出願は従来技術または従来意匠ではなく、従来技術または従来異称抗弁の理由にならない。但し、被疑侵害者がその実施した技術または意匠は抵触出願と同一であると主張した場合、本指南第139条または第141条の規定を参照することができる。
143、従来技術抗弁が成立するか否かを判断した場合、権利保護範囲に入ったと訴えられた技術特徴が、従来技術方案における相応の技術特徴と同一または均等である否かを判断しなければならず。係争特許を従来技術と比較してはならない。
144、従来意匠抗弁が成立するか否かについて、被疑侵害意匠が従来意匠と同一または均等か否かを判断すべきである。係争意匠を従来技術と比較してはいけない。ただし、被疑侵害意匠が関係意匠と同一または類似であり、被疑侵害意匠が従来意匠との視覚上差異が小さい場合、被疑侵害意匠が関係意匠の設計ポイントを使用したとすれば、従来意匠抗弁が成り立たないと認定すべきである。そうでなければ、従来意匠抗弁が成り立たつと認定すべきである。
145、生産経営を目的として、特許権者の許可を得ずに製造、販売された特許製品であると知らないまたは知り得ず、その特許製品を使用、許諾販売又は販売した場合、仕入れルートが正当であると証明できれば、賠償責任を負わない。但し、前記使用、許諾販売又は販売行為に対する権利者の差し止め請求は支持しなければならない。
146、合法的な出所とは、合法的な仕入れルート、通常の売買契約など正常商業手段で被疑侵害製品を取得したことを指す。
合法的な出所に関する証明事項について、被疑侵害製品の使用者、許諾販売者又は販売者が、取引習慣に合うレシートなどを証拠として提出すべきである。ただし、権利者が、被疑侵害製品が合法的な出所を有すると明確に認めた場合は、除外される。
147、使用者は、その使用した製品が、特許権者の許可を得ずに製造したものであるとは知らないまたは知り得ず、仕入れルートが正当であり、かつ当該製品に合理的な対価を支払ったと証明できれば、権利者の使用差し止め請求を支持しない。
148、被疑侵害行為は、特許権侵害を構成するが、権利侵害の停止を命じると国家利益、公共利益に損を与える場合、被疑侵害者に権利侵害行為の停止を命じずに、合理的な対価を支払うことを命じると判決することができる。
以下の事情は、国家利益、公共利益に損を与えると判定できる。
(1)中国の政治、経済、軍事などの安全を損う場合、
(2)公共安全事故発生の原因となるおそれがある場合、
(3)公共衛生を危ぶむ場合、
(4)重大な環境問題事件までなる恐れがある場合、
(5)社会資源の重大浪費になるなど、大きな利益アンバランスが生じる他の状況が発生した場合。
149、国家、業界または地方の推奨基準に明記された規準について、当該基準必要特許関係案件において、特許権者と被疑侵害者が当該特許の実施許諾条件について交渉したが、特許権者が故意に規準の制定に承諾した公平、合理、非差別的な許諾義務に違反したため特許実施許諾契約が達成できず、且つ被疑侵害者が交渉中に明らかな過失がない場合、通常、基準実施行為について権利者の差止め請求を支持しない。
国家、業界または地方の推奨基準ではないが、国際規格機構、または他の基準制定機構にて作成した基準であり、かつ特許権者は当該規格機構の趣旨に基づいて、公平、合理的、かつ非差別的な許諾義務を明示し、かつ承諾した場合、その基準必要的特許についても、上記と同様に取り扱う。
明示に関する判定は、前記規格作成機構の関係規則に基づいて、業界の慣例を合わせて行う。
基準必要的特許とは、技術基準を実施するため、必要不可欠な特許のことをいう。
150、基準必要的特許の許諾交渉には、双方は誠実信用の原則に従って交渉しなければならない。公平、合理、非差別の承諾声明をした特許権者は、当該声明に承諾した関係義務を負うべきである。特許権者に公平、合理的、非差別の条件で実施許諾を求める被疑侵害者も、誠実信用の原則に基づいて積極的に交渉しなければならない。
151、基準特許権者がその基準制作に承諾した公平、合理、非差別的な許諾義務の具体的な内容は、特許権者に挙証責任を負う。特許権者は、次のような証拠を提出して証明することができる。
(1)特許権者が関係規格化機構に提出した承諾声明、特許情報披露書類;
(2)関係規格化機構の特許政策書類;
(3)特許権者が作成し、公開した許諾に関する承諾書。
152、基準必要的特許の特許権者が故意に公平、合理的、非差別の承諾義務を違反したと証明できる証拠がなく、被疑侵害人が基準必要的特許の実施に関する許諾交渉にも明らか過失がなく、もし被疑侵害人が裁判所にその主張したライセンス費用、またはその金額以上の担保を提出した場合、基準実施行為について特許権者の差し止め請求を通常支持しない。
次の事情のいずれも、故意に公平、合理的、非差別の承諾義務を違反したと認定する。
(1)特許権を侵害したことと合わせて権利侵害の範囲、および権利侵害の方式を明記して書面を以って被疑侵害人に通知しなかった場合、
(2)被疑侵害人が、特許実施許諾の交渉の意欲を受け入れると表明した後に、商業慣例および取引習慣に従って書面にて被疑侵害人に特許情報または具体的実施許諾の要件を提示しなかった場合、
(3)被疑侵害人に商業慣例および取引習慣に合う応答期限を提出しなかった場合、
(4)実施許諾条件の交渉において、合理的な理由なく交渉を阻害しまたは中断した場合、
(5)実施許諾条件の交渉に、明らかに非合理的な条件を主張したため、特許実施許諾契約が達成できなかった場合。
(6)特許権者が許諾交渉中に他の明らかな過失があった場合。
153、特許権者は、公平、合理的、非差別の承諾義務を履行しなかったが、被疑侵害人も相談中に明らかな過失があった場合、双方当事者の過失度合いを分析して許諾交渉中断の主な責任方を認定してから、基準実施行為について特許権者の差し止め請求を支持するか否かを確定する。
次の事情のいずれも、被疑侵害人が基準必要的特許承諾交渉に明らかな過失があると認定する。
(1)特許権者から書面で権利侵害通知を受け取った後に、合理的な期間内に積極的に応答しなかった場合、
(2)特許権者の書面許諾条件を受け取った後に、合理的な期間内に特許権者からの許諾条件を受けるか否かを積極的に応答しなかった、または特許権者からの許諾条件を拒否した際、新しい許諾条件を新たに提案しなかった場合、
(3)合理的な理由なく、許諾交渉を阻害し、延期させ、または許諾交渉の参加を拒否した場合、
(4)実施許諾条件の交渉中に、明らかに非合理的な条件を主張したため、特許実施許諾契約が達成できなかった場合、
(5)被疑侵害人が許諾交渉に他の明らかな過失があった場合。